第十一章 別れ

15/23
144人が本棚に入れています
本棚に追加
/356ページ
 そしてその日も少女が倒れ、代わりにアルベルトが出向く事となった。最近は暑さが厳しくなってきたから、きっといつもより身体が弱っていたのだろう。そんな事を思いながらアルベルトは小屋を出る。  その日アルベルトを買った人物は、何度か会った事のある男であった。乱暴はしないし悪い人ではないのだが、とてもしつこい。その男に抱かれた後は酷く腰が怠く、立てなくなる程になるからアルベルトは苦手に感じている。  アルベルトの姿を目に留めるや、男は何処か嬉しそうに微笑んだ。ブラックタグと客の間に、余計な物などありはしない。大した言葉もなく、男はアルベルトを寝室へと連れて行くなり、美しい金髪に愛おし気な口付けを落とす。 「また、君なんだね」  それきり、言葉を交わすことはなく、男はアルベルトの唇に舌を這わせた。滑る舌先を無理やり抉じ入れ、男は歯列をなぞるように口腔を嬲る。不快を味わう一方、着衣の上からの念入りな愛撫に、アルベルトは微かに身を捩った。この僅かばかりの拒絶は、逆上せた男の脳には悦と捉えられるようだ。もっと反応を欲した男の筋張った指先は、何時も小さな胸の蕾を熟れるまで抓り上げる。そして勃ち上がった赤い蕾に、指で、舌で、念入りな愛撫を繰り返す。これを前戯と呼ぶ事など、アルベルトは知らないのだ。だからそうしないと何事もこの男は成せぬのだと思い込んでいた。  やがてそれも済むと、男はアルベルトを四つん這いにさせ、漸く服を剥ぎ、全身を隈なく舐め回す。背骨のまっすぐなライン、内腿の付け根、そして、肉が削げた尻朶の間で姿を隠す襞の一つ一つまで。唾液で滑る秘孔へと筋張った指先が沈むと、アルベルトは遂に微かな声を漏らした。 「くっ、ん……」  それは決して快感からの物ではなく、慣れぬ異物感故のもの。だが男は当然それに気付かず、気を良くし肉杭を打ち込み囁くのだ。 「気持ちがいいかい?僕も、良いよ」  男は狂ったように腰を打ち付け、何度も何度もアルベルトの腹に精を吐き出す。幸せそうとも言える恍惚の表情。この行為の何がそんなに良いのか、金を払ってでも得たい物なのか、アルベルトが理解する事は一生ないのだろう。
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!