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それから三日後。アルベルトは遂にその醜い人と対面する事となった。
「目隠し!?」
突然大声を上げたアルベルトに、フェイは鬱陶しそうに舌打ちをくれた。
「あまりの自分の醜さを見られたくないんだとさ」
その人はそれ程までに自分を卑下しているのか。何と可哀想な人なのだ。誰もその心に、寄り添ってはくれなかったのだろうか。そう思えばこそ、アルベルトは深く頷いて見せた。
「旅人らしいから今日は一階だ。準備が出来たら俺が連れていく」
アルベルトはまた小さく頷いた。口が額についている人間など多分いないだろうけれど、奴隷にすら見られたくないなどどれ程醜い姿なのだろう。その姿を見るだけで、傷付けてしまうのだろうか。その恐怖はあれど、アルベルトに選択肢はない。
目隠しをされ、フェイの部屋を出る。手を引かれゆっくり階段を一段降りるその度に、何故かフェイは握る手の力を強める。こんな事は初めてだから、上手く出来るか心配で緊張しているのだろうかと、アルベルトは決め込んだ。
「心配しなくても大丈夫だ。お前の信用を穢さぬように上手くやるよ」
「当たり前だ」
そう言って何故か、フェイの強くアルベルトを抱き締めた。
「……フェイ?」
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