第十二章 誰が為に生きる

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 フェイは元気だろうか。短気で乱暴で子供のようで、それでも、とても優しい男だった。一人でも生きて行ける、強い男だった。憧れ、そしてその心に近付きたいと思った。フェイは知っていたのだろうか。自身がこうしてフィリアに帰り着く日を。だからこそ拒絶し突き放し、弱いこの心が未練なく進めるようにしてくれたのだろうか。そう思うと、やはり若くしてラブールの元締めなだけあって、凄い男だった。誰にも頼らず、誰にも縋らず、たった一人守る為に、導く為に進む。まるで、アルベルトの目指した王の姿だ。フェイが王ならいい国が出来るだろう。だが王族嫌いのあの男が王になるわけが無いのが残念だ。  アルベルトがそんな事を考えていると、扉を叩く音が響いた。 「アル様」  扉を開けて入って来たシンは、アルベルトの手元を見て優しく微笑んだ。 「ラブールの人々への手紙ですか?」 「うん、ミトとフェイに。シンに紹介すれば良かったな」  ミトもきっとシンに懐いてくれるはず。フェイとシンはどうだろうか。だがシンならきっとあの男を上手く扱えそうだ。その姿を想像すると面白くて、アルベルトは思わず笑った。 「何か可笑しいですか?」 「いや、何でもないよ」 「……そうですか。ではそろそろフィリアの民に帰還を知らせに参りましょう。私は先に庭で待っていますから、ごゆっくりなさって下さい」  そう言って部屋を出て行く背中に滲む今までとは違う雰囲気に、アルベルトは思わず息を呑んだ。
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