第十二章 誰が為に生きる

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 シンは何故自分が醜い姿と嘘を付いたのだろうか。間違いと知らずに、前王である自身の墓を立てたからなのだろうか。アルベルトのいない間に命を落としたアンナ、この国では有り得ない、死刑囚となったレッド、そしてアルベルトの知らないシン。愛した国に見える微かな違和感、アルベルトはそれを知る事が怖かった。それでも知らなくてはならない。自身はこの国の王だったのだから。そしてきっとこの歪みを呼んだのは、紛れもなく自分なのだから。アルベルトは恐ろしい予感から逃がれる様に再び筆を走らせる。 『フェイへ──』  しかし、それ以上書く事が出来なかった。この不安をぶつけてしまいそうで、フェイの優しさに甘えてしまいそうで、二度と戻るなと言われたのに、会いたいと願ってしまいそうになるから。アルベルトはいつでも孤独に怯える。そんな自分の情けなさに、再び筆を走らせる。 『変わりはないか』  その一言だけを書いて、アルベルトは封を閉じた。  二通の手紙を手に、アルベルトは庭へと足を進めた。秋のまだ暖かい日差しの下で佇む城。アルベルトの好きだった愛らしい姿もそのままだ。 「シン、待たせたな」     
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