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その後は特にこれと言った言葉も交わさず、二人を乗せた馬はフィリアの小さな城へと入った。城の門を潜ったところでアルベルトを大地に下ろし、シンは軽く頭を下げる。
「では、馬を繋いで参ります故、お待ち下さい」
シンを待つ間、アルベルトは何時ものようにぼんやりと城を眺めていた。優しい木の色、丸みを帯びた焦茶色の屋根。城とは言えないような、そんな愛くるしい姿がアルベルトは堪らなく好きだった。
フィリアの王は皆派手なものが嫌いで、城ですらも質素に出来ている。それはアルベルト自身もそうだ。王冠も嫌い、着飾るのも嫌い、谷を抜ける風のように、優しい透明でいたい。彼は常々無意識のうちにそう願っていた。そして、その願い通りの少年に育っていた。
風と遊ぶ髪の鮮やかな金色は、細いその一本一本が光を放っているようで、白磁の肌を時折掠める度、するどい煌めきを残す。軽やかな二重瞼の下に嵌め込まれた翡翠は、彼の健康的な精神を映しているかのように輝いている。アルベルトは、内面の美しさが外面にも沁み出でているような、透き通る美貌の少年であった。
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