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P──── ッ
携帯のアラームが鳴り始めるか否かの瀬戸際でそれを止めた。
(……暗いな)
室内はまるでまだ夜のような雰囲気を放っていた。それは遮光性の高いカーテンのせいであった。
季節は冬から春になろうとしていた。夜が明け、空が白む時間も随分早くなって来た。
そんなことを考えながら俺は隣で熟睡している綾に目をやった。すぅすぅと小さな寝息を立てながら眠るその姿はさながら猫のようだ。丸まって眠るのが癖なのだと知ったのは一緒に寝るようになってからだった。
(はぁ…可愛いな)
その姿を見るだけで甚振りたいという気持ちが湧いてくる。
勿論その気持ちのままに無理やり起こして甚振るなんて鬼畜なことはしないが。
(まだ早い。もう少し寝かせておいてやろう)
そう思いながらそっとベッドから這い出て俺は部屋を出た。
俺、江嶋壮真の朝は早い。
色々準備しなくてはいけないことがあるから結婚してからの平日は常に朝の5時起きだった。
起き抜けの寝ぼけた頭と体をリセットするためにシャワーを浴びることから俺の一日は始まる。
シャワーを終えると軽く身支度をしてからキッチンに立つ。ふたり分の朝食と昼食を作るためにフライパンを振るう。
元々ひとり暮らしが長かったからある程度料理は出来た。しかし結婚してからは綾に美味しいものを食べさせたい気持ちからより一層料理の腕を磨くことに余念がなかった。
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