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少しベタだったがクリスマスイブのこの日、俺、江嶋壮真は友だち以上恋人未満関係にあった阪元綾にプロポーズした。
友だち以上恋人未満──つまり俺と綾は付き合ってはいない。
交際していない状態でいきなりプロポーズしたのだからもっと何か反論的な態度や言動があってもよかったのにそれ等は一切なく、綾は俺からの無謀ともいえるプロポーズをいとも簡単に受け入れたのだった。
(なんだ…こいつ、本当におかしな女だな)
プロポーズしたのは俺だったがこの予想外の綾の態度に少々面食らっていた。
「壮ちゃん」
「! 何」
「これからどうする?」
「え」
「こんな高そうなホテルでこんな贅沢なディナー御馳走になって、私、すっごく恐縮しているんだけど、この後、私はどうしたらいいの?」
「……えっと」
「私、いいよ」
「え」
「壮ちゃんのいうこと、なんでも聞くよ。だって私はもう壮ちゃんのものだもんね」
「っ!」
綾から出た不意打ちのひと言が俺の心臓をギュゥッと鷲掴みにした。
『私はもう壮ちゃんのもの』
そのひと言が今まで頑張って保って来た理性をあっけなく崩壊させたのだった。
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