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午前の業務を終え昼休憩に入った俺はデスクに持参した弁当を広げた。するとすぐに数人の女子社員が群がる。
「わぁ、今日のお弁当も美味しそうですね」
「本当、江嶋さんの奥さんって料理上手なんですね」
今日もまたそんなありきたりな言葉が飛び交う。
周囲には弁当は毎日妻が作ってくれると言ってあった。そう言うのが普通で、余計な詮索をされないための防衛策だった。
「奥さんも働いているんですよね?愚痴をいったりしませんか?」
「在宅ワークだから時間の使い方で無理なく家事をこなしているみたいだよ。元々料理も好きだったから家事に関する愚痴はいわないね」
「はぁー出来た奥さんですね。さすが江嶋さんが選んだ人って感じ」
「うん、すごく出来た妻だよ」
「きゃー惚気られたぁ」
彼女たちの話に合わせてペラペラと嘘が出る。
(いや、在宅ワークしてるとか出来た妻というのは俺の中では嘘じゃない)
真実と嘘を絡めた調子のいい会話は俺の結婚生活がごく普通の幸せなものだと強く印象付けられていた。
誰にも俺と綾の神聖な生活を脅かすような疑いは持たせない。
PPPPPPPP
(電話…?)
──そう、例え親でさえも綾との監禁婚を守るためなら平気で嘘をつく
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