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朱桜が朱雪を王宮に連れ帰った時、朱雪は十ばかりのまだ幼い子供だった。
その上、朱雪は己の名前も己の親の顔さえも覚えてはいなかった。
そんな朱雪が辛うじて話せた言葉は魔なるモノ・・・妖魔の使う言葉だった。
妖魔の使う言葉をどうして人であるはずの朱雪が話せたのか・・・それは朱雪が妖魔に育てられた子だったからだ。
妖魔は獣だけでなく人をも襲って食らう。
そんな妖魔は獣でもなく、人でもなく、導でもない。
もし、妖魔と心を通わせれるモノがいるとするのならばそれは導でしかあり得ない。
それなのに・・・朱雪はそれを人の身でありながら・・・また、人の子の身でありながらやってのけた。
朱雪は一つの常識を・・・一つの理を打ち破った王だ。
そんな王・朱雪に仕える導の朱桜は一風、変わっている。
黒の髪に黒の漢服。そして、赤の瞳・・・。
導は人の姿と獣の姿、半人半獣の姿を持つ。
朱桜の持つ獣の姿は猫。
だからこそ、少し風変わりなのは仕方のないことなのかも知れないが朱桜のその風変わりな様はそれだけでは済まないようなものでもある。
そんな二人の治める『春ノ国』は無用の争いのない温かな国・・・。
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