『夏ノ国』。

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()ノ国』の(しるべ)・モアの獣系は孔雀を模している。 翼を持つ(しるべ)は珍しく、翼を持った(しるべ)を得た国は数多の幸福に恵まれると言われている。 そして、その言い伝えはどうやら本当のことのようで、もう二度と甦ることなどないだろうと言われていた『()ノ国』は見事、甦り大国となった。 『()ノ国』の王・夏主(かしゅ)のシバは女好きで日中は常に女中を側に置いている。 そのシバの口から紡がれる言葉は一国の王のものとは思えないほど適当なものが多いのだが、それでも国勢が整っているところを見れば、シバに王としての器が備わっていることに間違いはなく、いざと言うときに見せられるシバの機転や決断や統制や気迫を知っている上層の官僚たちからはよっぽどのことがない限り、苦言を言われることもない。 それどころか上層の官僚たちだけでなく女中たちも民も皆、常時シバを慕って一目を置いている。 だが、(しるべ)のモアはそうはいかず、一日足りともシバに苦言を言わずにいられたことがない。 と、言ってもまだ幼い姿のモアがいくら吠えたところでシバはただ、笑うだけなのだが・・・。 【お前を王に選んだオレの判断は間違いだった!】 苦言の最後にモアはいつもそう言ってシバの元を離れて行ってしまうのだが夜には必ずシバの元に帰り、夜を明かす。 それはまるで雛鳥が親鳥の元に帰り、甘えるかのように・・・。 モアは誰よりもシバを慕っている。 しかし、それは(しるべ)にとって当たり前のことなのだ。 (しるべ)と王とには切っても切れない絆があるのだから・・・。
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