『秋ノ国』。

1/1
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

『秋ノ国』。

(しゅう)ノ国』は風吹き止まぬ風の国。 その『(しゅう)ノ国』を治めし王・秋主(しゅうしゅ)の名はグレン。 グレンを王に選びし(しるべ)主風(しゅふう)の名はシエルバ。 『(しゅう)ノ国』は他国との交易が盛んな国。 そのため、他国よりも多くの技術を有し、独自の発展をも遂げている。 その技術は今や『四季国(しきこく)』随一と言われるほどだ。 しかし、グレンが王になるまでは『(しゅう)ノ国』は『四季国(しきこく)』で最も発展が遅れていた国だった。 そのため、グレンは『四季国(しきこく)』一のやり手とも名高い。 『()ノ国』の王・夏主(かしゅ)のシバとグレンとは犬猿の中でお互いに顔を合わせればいつもいがみ合っているような間柄なのだが、お互いにお互いのことを心から嘲ることはしない。 それはお互いに相手の王としての・・・人としての器を認めているからだ。 【どんな愚なるモノでも疎かにすれば痛い目を見ることがありますから・・・】 そう言って笑んだグレンをシエルバは心の内で素直でないと思っていたがそれはいつものことかなどとも思っていた。 グレンはいつも素直でない。 どんなに辛い状況でも弱音を吐かないグレンをシエルバは尊敬し、誇りに思っているが『どうして?』とも思い、悲しくもなる・・・。 【どうしてグレン様はボクを頼ってくださらないのだろう?】 ・・・と・・・。 グレンは王になる前は軍人だった。 だからこそ、強い面もあれば脆い面もある。 その事をまだシエルバは理解できていない。 そんなシエルバの獣系は鹿でシエルバのその性格は(しるべ)の中で最も臆病で気弱だと言われている。 それは最小、最年少のモアよりも・・・。 シエルバのその臆病で気弱な性格をグレンは気に入っているのだが、シエルバはそのことを全く知らないでいる・・・。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!