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第35話/気掛り事象発令中?
あれから空気が重くなって、余り言葉を交わすことなく睡眠に徹したけど……。目的地に到着する少し前に目が覚めた俺は、窓際に座っていたストームに席を譲ってもらって上機嫌だった。
「今回の関所は、前回と違うんだよね?」
「そうは言うでも期待する程の違いはないはずやで。ワイ等も北の検問所は初めてやけどな」
ストームは、ゆったりとグレイの横の席に腰を落ち着かせると、今か今かと着陸を待つ俺を頬杖をついて鑑賞。ウォームに至っては、転寝の名残から欠伸をした後に背筋を伸ばした。
「教皇が愛用する場所だあるから、警備が厳重で。地元の人も余り利用しないらしいよ」
「へー、じゃあ前回取り調べは通用しないの?」
「本来はな。せやけど今回はVIP対応や。フレムの研修にLiderが全面協力してくれるんやからな! 失礼な待遇はないはずやで」
グレイの話を聞いて質問すると、ストームが胸を張って自慢気に説明。恐らく俺が退席した後に話し合われたんだろう。
(見返りを求められませんでしたか?)
Liderに配属される訳でもない俺に全面協力なんて、裏があるようにしか思えない。
それは鳳炎も同じ考えだったようで、テレパシーで尋ねてみると、ストームはニヤリと笑みを溢してテレパシーで答える。
(いや、あくまで好意やと言うとったで)
ーー好意。
聞く限りでは有難いことだけど、もし恩を返せと言われたら、地位も財産も無い俺にはこの身一つしかないので不安なんですが……。
(いかがされますか? 御主人)
(いかがって……)
まだ何もされた訳でもないのに、突然お断りするのは失礼だ。それにLiderしか知らない事もあるだろうし、相手が俺を必要としてくれてる。
それは記憶を失い、英里ではなくなった俺にとって非常に嬉しい事なので判断に悩む。
「とりあえず直接会ってから判断してもいいんじゃないかな? 相手に裏があるかもしれないから、僕等が護衛役として選ばれたんだよ」
「フレムを横取りされるかもしれへんからな」
ーーそんな大袈裟な。
ウォームの発言の後にストームが好戦的ににやりと笑みを溢して言うので、俺はコメントを控えつつも苦笑いを浮かべた。
申し訳ないけど、今の俺には取り合いになる要素が今一つ分からない。
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