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第36話/初仕事は探偵業務?
「フレム、WPの人に会ってどうだった?」
「え? っと……」
急にグレイから尋ねられて出来事を振り返ってみるが、不思議とカリカリと苛立ったストームしか思い出せない当たりヤバいと思った。
「殆ど会話らしい会話をしてないよ。でも小遣い貰っちゃった」
「小遣い?」
「これでウォーターの土産を買えるかな?」
そう言って受け取った3枚の札を見せると、グレイは間を置いて質問を質問で返す。
「フレムは幾らだと思って受け取ったの?」
「え? 三千円くらい」
「それ、三万イェンだよ」
「嘘ぉ!?」
子供の小遣いレベルだと思ったのに、毎年親から貰っているお年玉より金額が高くて驚いた。
「どうしたんや?」
「ムグルさんから正月でもないのにお年玉貰った」
「良かったやないか」
「フレム、三千イェンと勘違いして受け取ったらしいですよ」
すると素直に喜べない俺の事情を知ったストームは、笑いを溢してウォームに言う。
「なんや、フレムに教えてやらんかったんかいな」
「言ったら遠慮するだろうと思ってね」
「酷いな。財布が無いのにどうしよう」
予想以上の金額に躊躇いを感じながらも、ひとます腰に身に付けていたウェストポーチのポケットに3万円を収納させると、代わりに中に入れていた身分証を出して首から下げた。
「まず財布を買わなきゃならなくなったね」
「ほんとだよ」
しかし、様子を伺っていた巨体のディフロスが頭上から俺に話しかける。
「あの……。これでよろしかったらお使い下さい」
「えっ、いいんですか?」
相手の身長に合わせて腰を屈めてから差し出されたのは、長方形の茶封筒。英里だった世界では簡単に手に入る品だが、緑が限られているこの異世界では貴重な品のはずだ。再確認した後に封筒を受けとると、そこに現金を入れ直してからウェストポーチに納めた。
「有難うございます」
「いえ。ついでに首から下げられた身分証の確認と肩に乗っておられる方の身分登録をーー」
そう言って、俺の身分証を確認したディフロスが一時停止。恐らく原因は、肩に乗ってる鳳炎について書かれた内容にあるんだと思う。
「ペットじゃヤバいですか?」
俺は、敢えてストレートに尋ねた。
ーーというのも、鳳炎を見て勝手にペット扱いしたのではないかと思われないようにするためだ。
案の定、顔を上げたディフロスの表情が暗い。
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