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「さぁ、やることが決まったでぇ! ほんまフレムがおると展開早くて楽やわ」
「えっ?! まさかそのために親指を立て」
「ほんじゃワイは出発の準備するわ。フレムのことは頼んだで、ウォーム♪」
ストームは小難しい報告とか小賢しい手順が嫌いなんだろう。
盛大な溜め息を吐くサンダーに、申し訳ないと思ってしまう俺の前で。ウォームの肩を軽く叩いて言ったストームは、さっさと通信室を出て行った。
「あぁ見えて責任を感じてるんだよ。僕自身効率を優先したことで、フレムに怖い目に合わせちゃったからね」
確かに俺が倒れてる間に、仲をとりもっておけば作業効率は上がる。けどウェイクばかりに頼ることは出来ないから、急遽ウォームが俺から離れることになったんだろう。
「しかし、フレムを利用しなくても」
「分かってる。助力を求める相手がWPで、迅速な行動を求めなければ邪魔するつもりはなかったよ。フレムはこれからどうする?」
「どうするって……。必要な手続きは、サンダーとスフォームがやってくれるみたいだから暇に」
ーーならねぇや。
カインドの捜索は現状から考えて無理でも、偶然手に入れたモノを思い出した俺は、ポンっと手を叩いて「サンダー」と軽く挙手してから質問する。
「現場は暫く閉鎖にするんですか?」
「現場? 中央ドームのことか」
「うん。エレクさんに、氷付けにしたアスタルトを調べてほしいんだけど」
「アスタルトを?」
「今更どうして?」
サンダーとウォームは、お互い顔を見合わせて目配せすると、二人の質問に答えることなく弧の字に口を結ぶ俺を凝視。
恐らくテレパシーでどうするべきか、相談しているんだろう。暫く黙って待機していると、ウォームが肩を落として「分かった。僕が付き合うよ」と言ってくれた。
「今の時間、寝室にいると思うが」
「まぁ気分が悪くなくなったら、フレムの所為にするよ」
「どんだけ嫌なんだよ」
しかし医師であり学者でもあるエレクは、寝室にも医務室にもおらず、まさかと思って食堂にも足を運んでみたがいなかった。
ーー嘘だろ?!ーー
このタイミングで不在とか、良からぬ予感しかしないんだけど……。それはウォームも同じなようで、顔色が悪くなってきている。
「ごめん、フレム。行き違いの可能性があるから、もう一度寝室と医務室に立ち寄ってもいいかな?」
「どうぞ」
ウォームの心境を察して付き合う事にした俺は、移動中聞き込みをしながらエレクの行方を探してみたが、そもそもエレクを見かけた人はおらず。相変わらず医務室は不在で、寝室にもいなかった。
ーーこれはマズイぞーー
エレクは、俺の本名も正体も知っている。
このまま見つからず、もしカインドを拐った人物を手引きした疑いが浮上したら……。
なんて、考え過ぎなんじゃないかってぐらい。マイナス思考全快で、エレクが敵に情報を売ってた場合を考えた。
こっちはカインドの居所はおろか、確かな敵の情報すら無い状態なのに……。ウォームは、沈痛な面持ちで決断を下す。
「こうなったら呼び出してみるしかないね」
ところが俺達が寝室を後にし、その階の非常口を通り過ぎた時だ。重量感のある音と共に非常口が開いて、そこからエレクがひょっこり姿を現したのでビックリした。
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