第57話/ 見知らぬ悪魔より馴染みの悪魔

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「さぁ、やることが決まったでぇ! ほんまフレムがおると展開早くて楽やわ」 「えっ?! まさかそのために親指を立て」 「ほんじゃワイは出発の準備するわ。フレムのことは頼んだで、ウォーム♪」  ストームは小難(こむずか)しい報告とか小賢(こざか)しい手順が嫌いなんだろう。  盛大な溜め息を吐くサンダーに、申し訳ないと思ってしまう俺の前で。ウォームの肩を軽く叩いて言ったストームは、さっさと通信室を出て行った。 「あぁ見えて責任を感じてるんだよ。僕自身効率を優先したことで、フレムに怖い目に合わせちゃったからね」  確かに俺が倒れてる間に、仲をとりもっておけば作業効率は上がる。けどウェイクばかりに頼ることは出来ないから、急遽ウォームが俺から離れることになったんだろう。 「しかし、フレムを利用しなくても」 「分かってる。助力を求める相手がWPで、迅速な行動を求めなければ邪魔するつもりはなかったよ。フレムはこれからどうする?」 「どうするって……。必要な手続きは、サンダーとスフォームがやってくれるみたいだから暇に」  ーーならねぇや。  カインドの捜索は現状から考えて無理でも、偶然手に入れたモノを思い出した俺は、ポンっと手を叩いて「サンダー」と軽く挙手してから質問する。 「現場は暫く閉鎖にするんですか?」 「現場? 中央ドームのことか」 「うん。エレクさんに、氷付けにしたアスタルトを調べてほしいんだけど」 「アスタルトを?」 「今更どうして?」  サンダーとウォームは、お互い顔を見合わせて目配せすると、二人の質問に答えることなく弧の字に口を結ぶ俺を凝視。  恐らくテレパシーでどうするべきか、相談しているんだろう。暫く黙って待機していると、ウォームが肩を落として「分かった。僕が付き合うよ」と言ってくれた。 「今の時間、寝室にいると思うが」 「まぁ気分が悪くなくなったら、フレムの所為にするよ」 「どんだけ嫌なんだよ」  しかし医師であり学者でもあるエレクは、寝室にも医務室にもおらず、まさかと思って食堂にも足を運んでみたがいなかった。  ーー嘘だろ?!ーー  このタイミングで不在とか、良からぬ予感しかしないんだけど……。それはウォームも同じなようで、顔色が悪くなってきている。 「ごめん、フレム。行き違いの可能性があるから、もう一度寝室と医務室に立ち寄ってもいいかな?」 「どうぞ」  ウォームの心境を察して付き合う事にした俺は、移動中聞き込みをしながらエレクの行方を探してみたが、そもそもエレクを見かけた人はおらず。相変わらず医務室は不在で、寝室にもいなかった。  ーーこれはマズイぞーー  エレクは、俺の本名も正体も知っている。  このまま見つからず、もしカインドを拐った人物を手引きした疑いが浮上したら……。  なんて、考え過ぎなんじゃないかってぐらい。マイナス思考全快で、エレクが敵に情報を売ってた場合を考えた。  こっちはカインドの居所はおろか、確かな敵の情報すら無い状態なのに……。ウォームは、沈痛な面持ちで決断を下す。 「こうなったら呼び出してみるしかないね」  ところが俺達が寝室を後にし、その階の非常口を通り過ぎた時だ。重量感のある音と共に非常口が開いて、そこからエレクがひょっこり姿を現したのでビックリした。
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