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「そもそもアスタルトの出生事態、今だ解明されていないのだよ。伝説では狼藉を働いた人間だと言われているが、人伝では神の御遣いと言われている。矛盾しているが、どちらとも確たる証拠は無く。否定も肯定も出来ない。だから君の質問には、分からないとしか答えようがないのだよ」
「じゃあ、とりあえず調べるだけ調べてみることは可能なんですか?」
「それはまぁ、可能ではあるが……」
ーーと、ここでエレクは顎に手を添え。
俺を疑問視するかのように顔をしかめると、不機嫌そうなウォームをチラリと横目で見てから困った様子で頭を掻いた。
「あの、何か問題があるなら答えますけど」
「いや、君がアスタルトを調べるよう指示する意図は何となく分かる。もし簡単に使役出来るものなら、この世界の脅威に成りかねないからな。でも、君には魔法があるだろ? 何をそんなに危険視する必要があるのかな? と思ってな」
ーーあ~、なるほど。
確かに使役されたところで、俺には鳳炎や龍碑、竜祈がいるから問題ないのかもしれない。けれどグレイが側にいたら? Liderが対処出来なければ、WPが助けてくれる保証もないのに……。もしバールの正体が、俺が知ってるアレだとしたら……。と、思考を巡らせたところで、何故俺が危険視しているのが分かった。
「そう言えばエレクさんは、悪魔の存在を知ってたり、信じてたりはするんですか?」
「魔族ではなくてか?」
鳳炎に尋ねた時も思ったが、魔法やドラゴンが存在している世界の出身者だからと言って。悪魔の知識があるとは限らないらしい。
「魔族は、大体生まれも育ちも魔族ですよね?」
俺の勝手なイメージだが、負の感情を好み。努力して身に付けた実力というよりは、生まれ持ったチートな実力で世界征服を企む傾向がある魔族。そりゃあ探せば、人間から魔族に変異したケースもあるかもしれないけど……。一般認識としては間違ってなかったようで、エレクは「まぁそうだな」と相槌を打った。
「悪魔もそういった生まれも育ちも悪魔、っていう奴がいるにはいるんですけどね。逆に元が人間だったり、天使だったり。最悪神様の可能性だってあるんです。その点で有名な悪魔を名指しすると、〈バール〉ですかね」
ーーと、ここで反応を示したのは鳳炎だ。
黙って俺の肩に控えてたのに、急に落ち着きを無くしてテレパシーを使用する。
(御主人、それはカインドさんを誘拐した)
(うん、だから深追いはしたくなくて……。例えバアルって発音が変わっても、〈王〉と言う意味になるからちょっとね)
すると俺達のテレパシーを上手く受信していたエレクが、(なるほど、なるほど)と割り込みテレパシーをしてニタリ顔。(それでアスタルトを使役した種明かしをしてほしいと言う訳か)と納得した様子で応じると、固い表情を浮かべるウォームに言う。
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