28人が本棚に入れています
本棚に追加
「随分とまぁ有能な見習いなことで」
「先が思いやられるだけだよ。調査の仕方は、サンダーと話し合ってくれないかな?」
「あの堅物と?」
ウォームがエレクを苦手としているように、エレクはサンダーに対して苦手意識を持っているようだ。げっ、とばかりに嫌そうな反応をみせると、ウォームが言いたいことは分かるとばかりに助言する。
「調べる理由さえ伝えれば、その気になってくれるはずだよ。言い出しっぺがフレムなのは知ってるからね」
「そりゃあフレム様々なことで」
「だからと言って、くれぐれも単身で調査するなよ。今回は見逃すだけだからな」
「はいはい、分かりましたよ」
エレクはそう言って、立ち去り際に俺の頭をわしゃわしゃと撫でまわすと、上機嫌に歩き出しながら言う。
「結果が分かれば直ぐ報告するわ」
「有難うございます」
するとヒラリと礼を言った俺に右手を振ったエレクは、左手をポケットにしまいこんで意気揚々と去って行った。
「どうやらフレムが気に入ってるようだね」
(それはどうかな?)
俺が念のためテレパシーに切り替えて返答すると、意外だとばかりに視線を向けて来たウォームに困った表情をしてみせた。
(気になるようなら監視をつけようか?)
(いや。俺の事が気に入ったからとかじゃなくて、単純にアスタルトの調査が出来るから協力してくれるんだろうなぁ。と思って)
すると思い当たる節があるようで、苦笑いを溢したウォームは、エレクの姿が見えなくなった通路を一瞥。何かを悩んでいるようだったけど、気が抜けて俺の腹の虫が鳴ったところで思考時間を切り上げた。
「そう言えば、朝食がまだだったね」
「なんかゴメン、催促した感じになって」
「構わないよ。フレムは鳳炎と一緒に、上の自室に戻っていいよ。落ち着いたら色々と聞きたい事があるからね」
ーーですよねぇ。
まさかカインドを拐った相手が、ご丁寧に自己紹介していったとは思いもよらなかっだろうし……。悪魔の知識があるだけで、黒幕を予測してる奴が此処に居るなんて夢にも思わなかっただろう。
「上のって、改装した寝室の事だよね?」
「そうだよ。僕が朝食を持ってくるまで、誰が何と言おうと部屋から出ないようにね」
「わ、分かった。鳳炎の分もよろしくね」
エレクの事もあって、これ以上精神磨り減らしたくはないんだろう。言葉遣いは優しくても圧力のある言い方に根負けした俺は、素直に上の階を目指して、カインドとお茶会したホールへと続くドアを開けた。
最初のコメントを投稿しよう!