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「でも、まだはっきり言える事じゃないよね? それなら余り言い触らさない方が身のためだよ。カインドの印象が悪くなって、見捨てられても困るし」
「そ、そうですよね。すみません」
「せやけど危ない目に負うて、フレムはんは怒らんのんやな」
俺に対する慰めも含まれていたのか、逆に注意を受けて謝るメリアの肩の上からぴょん吉が尤もなコメントをした。
まぁそれもこれも、カインドがカードに封じられし者だと知っているからこそというか。カインドを拐った人物の発言をリピートする限りでは、遅かれ早かれ命を狙われるとしか思えないので。むしろ、この程度で済んでラッキーと前向きに考えちゃってる所為もあるんだろうけど……。
カードに封じられし者につしては、まだ鳳炎に話してないことなので。両腕を組んで悩ましげに考えた末、無難な答えを口にする。
「ん~……。多分今んとこ、失うもんがなかったから許せるんであって。メリアさんみたいにパートナーを失ってたら、感情任せに何か言ってたとは思うよ」
でもメリア自身も、泣いたような痕跡はあっても怒っているようには見えなかった。
ーーふっきれたのかな?
それとも、そう見えるだけなのかもしれないけど……。随分落ち着いた様子だったので、俺は試しに相手のことを突っ込んで聞いてみることにする。
「それより此処で何してたの?」
「安全が確認出来るまで、此処で待機するようサンダーに言われたんよ」
「フレムさんは?」
「俺は、此処で朝食を食べることになったからウォーム待ちだよ。その後、多分聞き取り調査されて。WPの事情聴取とかのために、午後から表世界に移動する予定だけど」
ーーと、ここでメリアさんが暗い影を落とし、涙目を浮かべている事に気付いた俺は、動揺と共に言葉を切った。
どうやら言ってはならないことを口走ってしまったようである。
「ご、ゴメンな、フレムはん。既に予定が決まってるとは思わなかったけん。単純に不安になったんやと思う」
ーーあー、なるほど。
よく考えて見たら、彼女はパートナーを失っただけではなく。遣えていたカインドも拐われてしまったので独り身だ。
それにぴょん吉は、兄であるサンダーが引き取って世話をするんだろうけど。メリアさんは、女性の上に俺達とは異なる世界の住人だ。かなりデリケートな存在なため、さすがに行き先が決まってないのかもしれない。
「と、とにかく座って下さい。俺は見習いの身なんで、話を聞くぐらいしか出来ませんけど……。悪いようにしませんから」
「あ、ありがとうございます」
「あっ。俺が隣に座っても大丈夫ですか?」
涙するメリアさんに座ってもらおうと椅子を引いた後、当たり前のように左隣の椅子を引いたところで。自分が男であった事を思い出した俺は、下心は一切無い姿勢を見せ、彼女が小さく頷いてから席に座った。
「すみません。こういう時、どうしてあげれば良いのか。よく分からなくて……」
すると「ううん」と言って、首を横に振ったメリアさんは「私の方こそ、急にごめんなさい」と言って席に着いた。
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