第57話/ 見知らぬ悪魔より馴染みの悪魔

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「メリアさんは、俺よりカインドのよく知ってて。大切なパートナーを失ったんですから泣いて当然です。バカにする奴がいたら、タンスに小指をぶつける呪いをかけてやりますから言って下さい。結構痛いはずですよ」 「ふふっ」  英里だった頃、友達がよく落ち込んでた俺に言ってた台詞を思い出して実行。今は魔力があるので、冗談に聞こえない部分もあるかもしれないけど。わざとらしく呪いをかけてやる風に手を動かせば、メリアさんは小さく笑って涙をぬぐった。 「そもそもメリアさんは、実戦が出来る程の経験者なんですか?」 「フレムさんは?」 「俺ですか? 俺は多分、記憶があった昔の方が戦えるんだと思います。今は鳳炎がいないとダメダメですよ」  そう言って俺は、手際よくホールの隅にあったティーセットを活用して、お茶をいれる準備を始めた鳳炎に視線を送った。 「そうなんですか? でもウォーム様の施設で、襲ってきたアスタルトを退治したとか」 「それは、鳳炎の火炎放射のお陰で。俺自身は、体調が悪そうな鳳炎にパワーアップ魔法をかけてあげただけです」 「けどセイク様の施設で遭遇したアナトは」 「あれはウォームが途中で参戦してくれたし、皆のサポートがあったからこその結果であって。断じて俺だけの実力で解決した問題ではありませんから」  しかし、それを聞いた鳳炎が片隅で小さく笑ったこともあって。疑いの目で俺を見たメリアは、剥きになった様子で質問を重ねる。 「じゃあウェイク様の施設で起きた出来事は、どう説明するんですか?」 「え゛? あれこそ、俺はアナトを先導しただけで何もしてませんよ。Liderに銃口を向けられた時に魔法使ったけど、それだけで戦闘能力があるとか言われても困るし」  けれどメリアの顔色からして、納得してないのは直ぐに分かった。一体誰と比べてるのか知らないけど、此処は第三者の意見を取り入れないと埒が空きそうにない。 (た、助けて、鳳炎) (お疲れ様です)  本日二度目のヘルプコール。お茶を差し入れに来てくれた鳳炎にテレパシー頼ると、彼は困り果てた主に変わって話し掛ける。 「そう言えばメリアさんの世界で言う一人前の実力は、どのくらいのものですか?」 「一人前ですか?」 「はい。私達の世界では、例え召喚魔法が使えたとしても。召喚したモノを支援する魔法やアイテムを上手に扱えるようになってから、ようやく一人前と言われます」 「そ、そうなんですか?! わ、私達の世界では、召喚出来るモノのレベルで実力が決まるようなものですから。ある程度の魔法が使かえるフレムさんは、プロ顔負けの実力者だと思ってました」  ーーマジか。  世界が違えば基準も変わる。  そこに気付けなかった俺は、相手の常識を理解したと同時に疑いが晴れてホッとした。
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