第58話/見えない敵の存在

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 誤解を招けば、裏切者として扱われるだけじゃなく。ウォームの身の上を知らない(あいて)に、多大な損害を与えかねないしな。  ……だけど……。 (因みにウォームは、自分の身の上話はしなかったの?)  答えはなかったけど、目が合った鳳炎の反応で気付いた。気付いてしまった。  彼は、相変わらず自分の事は語らなかったようだ。自分が我慢すればどうにでもなる、とでも思っているんだろうか?  ーー(ウォーム)の悪いところだーー  まだ記憶が曖昧過ぎて、他人(ひと)に話せるレベルではないけど……。  昔の俺は、そんな彼の態度が嫌いだった。 (自分の意志とは関係なく。カードに封じられし者になったとか、言わなかったんだね) (な、なんですか? それは……) (俺も思い出した限りの事しか知らないけど、ウォームは嘘を吐いてる訳じゃないよ。気付いて欲しいけど、気付かれると迷惑がかかると思って我慢してるだけだと思う)  すると、思い当たる節があるようで。呆れた様子で肩を落とした鳳炎は、優しくテレパシーを返してくれる。 (つまり御主人は、ウォームさんが秘密にしてることをご存知なんですね?) (うん。昔の俺は、ウォームが自分のことを報告してくれなかったことが不思議で……。裏切りを想定して、ラーリングに預けたんだ)  ーーでも違った。  彼はカードに封じられし者になっても、見つけたキアを見守り続けながら、俺の仕事を全うしようと努力し続けていた。 (けどカードの封印を解いてウォームの主となったのは、魔力量が多いスフォームだったから……。今はスフォームの指示をきいて、俺達を守ろうとしてるんだと思う)  しかも敵対の可能性も考えて鳳炎に言わなかったとすれば、魔族でもあるスフォームが悪巧みをしてる可能性は十分にある。 (要するに最悪な事態を想定して、私に余計な事を話すつもりはなかったと?) (多分。敵として合間見えた時、容赦なく裏切者として殺せるようにと思ってのことだろうけど……。鳳炎、怒ってる?) (ほんの少し……。ですが、ウォームさんらしいとは思いますよ) (そっか)  つまりウォームは、根っからのお人好しで。昔から自分のことは二の次にしてしまうタイプなんだろう。それを聞いて安心してしまう俺もどうかと思うけど、忘れない内にと続けて情報共有を行う。 (因みにカインド、ストーム、サンダー。それとウェイク、セイク、ウォーターもカードに封じられし者で。スフォームが所持者なんだよね) (では主要なメンバーは、全てスフォームさんの配下。という事ですね?) (うん。後キアもカードに封じられし者なんだけど、所持者はラーリングなんだ) (あー、それで話が読めて来ました。所持者が違う上に、ウォームさんの所持者が魔族のスフォームさんだからややっこしい事になっているんですね?) (うん、まぁそれもあるんだろうけど……。ラーリングの身が、本当に危ないのかもしれない)  魔力は二人分あるにしても、肉体は1つ。  無条件で8人を使役出来るとは考えられないので、昔の俺はラーリングに忠告したんだろう。
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