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それにスフォームがラーリングを想う気持ちは、誰よりも強い事を俺は知っている。
何より此の世界に来た当初、しきりにラーリングの事を知ろうとしていたウォーム達の様子が頭にひっかかっていた。
(それはラーリングさんを助けるために、スフォームさんの悪巧みを援助している可能性があると言うことですか?)
(うん。ラーリングとは仲良くやってたようだし、カードに封じられし者は、死んでも所持者が変われば生き返る事が出来るんだ)
(それでウォームさんもカインドさんも、簡単に死ぬ覚悟が出来るのですね)
(うん。すっきりした?)
(はい、お陰でだいぶ話が見えてきました。随分とややっこしい事になっていますね)
(でも此処で逃げ出したら、一生後悔するような気がするんだよね)
物事を知り過ぎて、知らなかったと言えない程になってしまったとも言うけど……。
ここで俺と鳳炎の内緒話は幕を閉じた。
人の気配を察したと同時に聞き耳を立てると、すっくと立ち上がった鳳炎が、ノックをして直ぐドアを開けたウォームと対峙する。
「良かった。テーブルに飲みかけのコップが残ったままで、ちょっと心配したよ」
「申し訳ありません。メリアさんと亡くなったパートナーさんのことで話し込んだ後、片付けもせず部屋に入ってしまって」
「暫く部屋には入らない方がいいよ」
人の気配が顔見知りと知るや否や、ベッドから腰を上げて歩み寄った俺が忠告すると、「だってさ」とウォームが死角で見えない位置にいたストームに告げた。
部屋を出て見ると、ちょうどメリアさんを呼び出そうとしたところだったらしい。
「一体何を話したらそうなるんや」
「メリアさんのパートナーが優秀であると、御主人が見抜いてしまったんですよ」
「どうやらメリアさんの世界には悪魔が存在してて、見た目が人間と変わりない悪魔を見抜いちゃったみたいなんだよね」
すると険しい顔でメリアが閉じ籠る部屋のドアを一瞥したストームは、困ったように頭をかいて俺に尋ねる。
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