第58話/見えない敵の存在

5/10
前へ
/314ページ
次へ
「ほんで、マジもんなんか? フレム」 「それは分からないよ。俺も書物でしか知らないし、見た感じ悪魔って言われても分からないぐらいべっぴんさんだったよ。性格は、プライド高そうな貴婦人ぽかったけど」 「そらワイのタイプじゃあらへんな」  問題はそこじゃないんだけど、俺の悪ノリにのってくれるストームは優しいと思う。  一方俺が召喚した龍碑と竜祈の実力を知っているのか。ストームの隣に座るウォームは、深刻な表情を浮かべて言う。 「だけど召喚した龍碑と竜祈の攻撃を()けながら、正確にフレムの首を狙ってくるなんて……。鳳炎が傍に居てくれて、ホント助かったよ」 「引き際が早かったので、本気で御主人を狙ってるようには見えませんでしたけどね」 「あわよくば、って感じやったんか」 「そうですね。ですから相手の本命は、カインドさんで間違いないと思います」  俺もその点に関しては激しく同意した。  悪魔の知識がなければ効果の無い脅しに、戦闘不馴れな俺でも分かってしまう程の諦めの早さ。おまけに俺を呼び出しておきながら、現場にカインドの姿はなかったし……。  目的を果たしたからヨシ、と言わんばかりの(いさぎよ)さが印象に残る。 「ほんなら敵の目的はなんや?」 「変電システムじゃないの? 鳳炎の話によると、随分高度な魔術を使用されてるみたいだし……。魔術なら魔法が使えないカインドでも使えるよね?」  すると、目を丸くして驚いたストームとウォームがお互いの顔を見合わせた。  恐らく企業秘密(トップシークレット)だったのだろう。  ウォームが慎重な面持ちで俺に尋ねる。 「フ、フレム。もしかして魔術の知識も、思い出してたりするの?」 「いや。まだ使った覚えはないけど、基礎的なことなら知ってるよ。それに例え俺の命が奪えなくても、魔術が使えるカインドがいれば、魔石のエネルギーを独占することぐらいは出来るよね?」  かなり大胆な予想だが、否定要素がなかったんだろう。食事の手を止めたストームが真剣な目付きで発言する。 「ほんなら目的は、蓄積された魔力の可能性が高いっちゅうことやな」 「それも(けが)れた力を望んでるとしたら、悪用される可能性が高いよ」 「絶対何かありますね」 「問題はその何かてことか」  鳳炎に続いてウォームが言ったように、何かがあると分かったとしても、その何かが分からなければ対策のしようがない。  カインドが(さら)った奴が、ヒントになるような事でも言ってくれてたらと思うけど……。 「そう言えば、この世界に悪魔(バール)って。本当にいるのかな?」  俺が今回深追いしなかった一番の理由だ。  この世界では、天使や悪魔の名を曜日として愛用されてるけど、本物の天使や悪魔を見たことあるような話は聞いたことがない。  グレイも悪魔が総名称とは知らなかったようだし、実在しているとは言わなかった。
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加