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「お待たせいたしました。ご足労をおかけして申し訳ありません」
「いいえ、此方こそ忙しい時にすみません。フレムと話したい事があるんでしたよね?」
親切心で来たはずなのに、互いのプレッシャーが半端ないのは何故だろうか。つぅか俺がいない時、一体どんなやり取りをしているんだろう。隠しカメラでも設置して、観察したくなる程空気が悪いんですけど……。
人型から小型ドラゴンへと姿を変えた鳳炎を肩に乗せ、不安そうに双方の顔色を伺っていると、レディウスが「はい」と手短に応じた後、「まぁどうぞ、御座り下さい」と言って応接スペースへと通してくれた。
「……あの、死者や怪我人は出ましたか?」
「いえ、ご安心下さい。意識が戻らない者が数名おりますが、皆命に別状はないと報告を受けております」
「そ、そうですか。良かったぁ」
でもカインドの事は言えなかった。
レディウスも気を遣ってくれてるようで、俺に対する質問で止めてくれる。
「WPに協力を求めるそうですね」
「フレムの命を狙われたので念のためです」
「お、俺からお願いしたんです。どうも此の世界の人間ではなさそうですし、ウォーム達にこれ以上迷惑をかけれないので」
「そうでしたか」
ウォームの淡白な返答に、ちょっとトゲを感じた俺はオブラートにフォロー。いつの間か冷戦状態に陥っているんですが、原因が分からず内心泣きたくなってくる。
「まぁなんにせよ。この度の件は、効率を優先した我々の行動が仇となっただけで。狙われたフレムの所為ではありません」
「それは此方も理解してるつもりですが、例の調査はいかがされますかな?」
しかし、まだ調査の件をウォームに話してなかった俺は、レディウスの意味深な発言を取り消す狙いで質問する。
「あの……。それよりウェイクの施設について、俺は知らなすぎのような気がするんですけど……。あそこは、ウェイクやLiderの権限より住民の意見の方が強いんですか?」
すると、二人は途端に顔を見合わせて悩み始めた。お互い何かしらの思惑があったんだろうけど、そこから説明しなければ話が進まないと思ってくれたようで。レディウスの出方を伺っていたウォームから口を開く。
「ちょっと説明が難しい、かな」
「そう、ですな。まずウェイク殿の施設には、少なからず先客がいたとお伺いしておりますが……」
「先客?」
それが正しい情報なのか知らないレディウスは、ちらりとウォームを一瞥。するとウォームは、前屈みになっていた姿勢を少し直してから話し始める。
「裏世界には、国とも村とも言い難い先住人が点在しているんだよ。そして、裏世界の住人は何者にも縛られないと聞いたことがあるけど……。当たってるかな?」
「その通りです。裏世界で暮らすということは、己の身は己で守り、自給自足が原則のため。教皇の命に従わなくても良いのですよ」
「あー、だから協力することしか出来ないんですね?」
レディウスの話を聞いて、ようやく理解した俺は、納得した様子で各自に配膳された珈琲を見た。ーー真っ黒で苦そうである。
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