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Liderと協力関係とは言え、彼は異世界の住人で此の世界のノウハウなんて当時知らないだろうし……。死石の取り扱いは特に厳しいから、危ない橋を渡ってまで儲けようなんて考えは働かないと思われる。
どうやらそこ辺は、レディウスも考えが及ぶ範囲だったようで同意してくれたものの。彼の答えが推測の時点で、もっと上の世代の話。それも大胆な決断が下せる程の大物が関与しているのなら、考えられる答えは1つしかない。
「もし教皇様のアイディアでしたら、辞めるのも自由なのが裏世界の常識だったりするんですかね?」
「いえ。さすがにそんな無責任な事は……」
「じゃあ契約更新時期のタイミングに合わせての撤退だったりするんですかね? 何はともあれ、早いとこ説明会のようなものを開いてくださると助かるんですけど」
「説明会、ですか?」
そのような文化がないのか。それとも自己責任前提の裏世界だからこその待遇なのかまでは知らないけど……。こればっかりは、異世界の人間に押し付けられても困る。
レディウスの反応からして、ハッキリと言ってやるしかないと判断した俺は、申し訳ない雰囲気を醸し出しながらも必要性を訴えることにした。
「今の世代に昔の経緯を知ってる者がいなさすぎて、ウェイクに頼ってるんだと思うんです。地元の人なら、Liderにとって教皇の命は絶対なことぐらいは知ってるだろうし、だからこそ教皇に繋がりがありそうな施設幹部であるウェイクに苦情が殺到してるんだと思うんですよ」
しかし、納得はしても(それならフレム殿が……)なんて言いそうなレディウスの視線を感じとった俺は、ラーリングとの約束を守るために両手を組んでお願いする。
「そこで申し訳ないんですけど、誰か説明出来る人を派遣して下さいませんか? もうレディウスさんしか頼れる人がいないんです。忙しいのは分かっているんですけど……。どうか、お願いします!」
て言うか、いつも無茶な頼みを聞いてあげるんだからさ。このくらいやってよ! というのが本音だったりするんだけども……。
悩むレディウスを前にしたまま、黙って上目遣いの眼力を行って数秒後。なんとか「分かりました」と承諾してくれた勢いで、例の調査も延期してもらった。
(これでウェイクが過労死しないと良いな)
交渉成立とまではいかなかったけど、その旨を教皇様に伝えてくれる約束は交わしたので。レディウスと別れての移動中、俺はげっそりと疲れた様子でテレパシーを溢した。
(迫真の演技だったよ)
(さすが御主人、着目点が素晴らしいですね)
(いや、誰か気付こうよ)
学校のテストでは常に平均点の俺が分かって、様々な経験と記憶を兼ね備えた人達が気付かないって致命的だと思うのですが……。
(やっぱりフレムがいないことには、この人間関係は保てそうにないね)
(それが一番困るんですけどね)
だけど己の存在が必要とされることのは、世界が変わっても嬉しい事で。人が良すぎるかもしれないが、苦労したかいがあったと思わずにはいられなかった。
【完/見えない敵の存在】
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