第59話/伝説に生かされる者

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「お前さんは今の内に休憩や」 「土産話を楽しみにしている」  けれどサンダーの発言から何やら思い出したストームは、声に出して「あ、そうや」と言った後。とばかりに、何やらテレパシーでサンダーと対話。  そこで目を丸くして驚いた反応した後、俺を見たところからして。多分カインドの部屋に引きこもっているメリアの事だろう。 「まぁ話し合ってみぃや」と、軽々しく締めくくったストームに対し、サンダーは「そうさせてもらう」と返した。 「余り力になれなくて悪いね」 「いや、有益な情報に感謝する」  ウォームの謝罪に対し、サンダーは礼を口にした後、ジッと様子を伺っていた俺に向けて微笑んでくれた。  --少しは希望を持てたのだろうか?  掛ける言葉が思い付かなくて、控えめに微笑み返す事しか出来なかったけど……。  サンダーは、俺達が飛び立つまで見送ってくれた。 「あっ、そうそう。忘れない内に言っとくけど……。時間が出来たら相手して欲しいって、サンダーが言ってたよ。一対一(サシ)で」 「一対一(サシ)で?」  それならテレパシーでも良いから、直接言ってくれれば……。と思ったものの。俺のテレパシーは自慢出来る程有能じゃない。 「ウォーム。それ、何時(いつ)の話?」 「別れ際だよ。フレムに直接言えばいいのに、どうせ僕に相談するだろうからって」  --確かに。  結構好き勝手させてもらっているが、俺は見習い身分で。今のところウォームが保護者のようなものだ。遊びに誘われても、ウォームに相談無しで外出は出来ないだろう。 「守護竜込みでならいいよ」 「それは言っといたよ」 「有難う♪ だけど一対一(サシ)って……」 「恐らくカインドの事か。悪魔に関わる事やろ。どのみちワイ等に横やりを入れてほしくない話題のはずや。慎重な性格だから、アホな真似はせんと思うけどな」  --と、これは用を済ませて旅客席へと移動してきたストームだ。俺の真向かいに座るウォームの傍に歩み寄ると、「物知りなフレムの協力を得たいんやろ」と発言を加える。  __てか、物知りって。  調べさえすれば、分かる範囲の事しか知らないはずだけど……。意外と英里だった頃に得た知識が役に立ってるようで嬉しい。 「問題は、この世界にフレムの言うような悪魔王(バール)が実在してるかどうかだね」 「ぶっちゃけどうなんや? フレム。心当たりあるんか?」 「いや、まぁ……」 (無いとは言いきれないけどさ)  すると皆一斉に俺を見て、ストームが(あるんかい)とテレパシーで突っ込みを入れてきたけど……。俺はちゃんと教えたはずだ。  ウェイクが管理している地下層に何かがいると__。 (て言うか。地下層に神様がいるかもしれないから、施設の活動に反対してる人達がいるんだよね?)  そこでようやく俺が言う心当たりに気が付いた三人は、顔色を悪くして沈黙した。  どうやら彼等は、単なる噂レベルの認識だったようである。
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