第59話/伝説に生かされる者

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■□■□■□  それから、どのくらいの時間が経過したんだろうか? 腕時計をしてはないので、体感時間としては言うと30分くらいか。  でも大体そう言う時は、15分も経ってなかったりするので信じないでほしい。  ただ経過として、気を利かせたストームが座席の上にある収納BOXから毛布を引っ張り出し。のびのびと座席を後ろに倒した俺は、膝上で寛ぐ鳳炎の背を撫でながら眠気に誘われたことだけは覚えている。    --つまりコレは夢だ!--  コスプレのような例の赤い私服姿で、朱色の鉢巻をなびかせながら、俺は真っ白な空間に無防備な状態で身を投げ出されていた。  上も下もない、と言うか。ふわっと浮き上がる前髪と鉢巻の動きは、白紙という名の無の宇宙空間。現実だったら窒息死だろうだが、パチパチと手を叩く音が響いたところからして、空気は存在しているのだろう。  振り返り様に体勢を整えると、不思議の国のアリスに登場しそうな獣顔の小柄な白兎が、俺の視覚に入る高さに浮いていた。 「実に見事なご対応で感服致しました。  (わたくし)、ウィズドゥレットと申します」 「……ウィズドゥレット……」  ウォームから容姿を聞いてはいたけど、黒いシルクハットにタキシード。首に金色の懐中時計をぶら下げ、手足は人間に近いものの。肉球があって毛深い時点で、獣の手足が二足歩行するために進化した様だ。  俺は丸腰のこともあって、警戒心丸出して相手の自己紹介に耳を傾ける。 「貴方と同じ。今は伝説よって存在し、生かされてる者です」 「今は?」  しかし、その質問は受け付けないとばかりに、片眼鏡(モノクル)を越しに赤い目を細めたウィズドゥレットが言う。 「百聞は一見にしかず、貴方の右手にメモを握らせました。必ず目を通して下さいませ」  だけど此処が夢だと気付いたところで、起きたら忘れるというのがオチである。  必ずと言われても、と思った瞬間__  びくっ。  突然階段から足を踏み外した感覚を覚え、息を飲んだように目を覚ました。 (だ、大丈夫ですか?) (うん)  幸い寝る前まで俺の膝で寛いでた鳳炎は、空いていた隣の席で身体を丸めて寝ていたので大事にいたらなかったけど……。  俺の右手には、くしゃくしゃになった四つ折りの紙が収まっていた。  --ゴミ、だよね?--  辛うじて夢での出来事は覚えていたけど、紙を広げてみる前に横目で隣をチラリ。  ウィズドゥレットに会ったなんて事が知られると、鳳炎やウォームに怒られるのではないかと思った俺は、念のため右手を毛布に隠してから紙を広げてみた。   --日本語だ--  周囲に邪険されてることから、敢えて読めない文字で書くとか。暗号化されてたらどうしようかと思ったけど、普通に読める形で言い伝えが記されていた。
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