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幻夢の架け橋を渡りて
舞い戻りし天魔の子
異界より賜れし叡知によりて
繰り返されし営みの神意を暴き
新たな門出へと導かん
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--意味は何となく分かる。
天魔の子は、特異体質である俺のこと。
つまり、鳳龍 雄が関わっている内容だ。
--だから鳳龍伝説と言うのか?
それに異界より賜れし叡知って。
マニアックな趣味レベルの知識を差しているのだとしたら、英里だった世界の住人の殆どが賢者と言っても過言ではないだろう。
--いけない。
ちょっと頭が痛くなってきた。
--それに繰り返されし営みって、
この世界の歴史のことなんだろうか?
ウェイクが管理・運営している施設は、遺跡を利用してるみたいだし……。発展していた文明が、突然滅亡して遺跡になった話なんて。英里の世界だったらあるあるだ。
--そこに真意ではなく、
神意が働いているのだとすれば__。
「何してるの?」
様子を見に来たウォームに声をかけられ、咄嗟にマズイと思った俺はメモを隠した。
「考え事だよ。それより、もうすぐ到着?」
「いや、後二時間くらいかな。寝付けないようなら話し相手になるよ」
「い、いいの?」
恐らく此処で断ったらバレる、と判断した俺は、渾身の演技力で隠したメモをどうするべきか悩んだ。
ウィズドゥレットの名が出しただけで、不機嫌な様子を見せた彼だ。相手を敵視しているのなら、話題に出さない方がいいのかもしれない。
けれど俺の真向かいに腰を下ろしたウォームは、「勿論」と肯定した後に意味深な微笑みを浮かべて言う。
「何をそんなに思い詰めているのかな?」
ーーあ、バレてら。
記憶が欠如してるものの、ウォームと会う機会は多いので。何となく空気で察した俺は、一旦口を一文字に閉ざした。
「僕には言えないこと?」
「いや、その……。怒られそうで怖いと言うか。上手く説明出来ないから困ると言うか」
「今まで寝てただけなのに?」
ーーそれもそうか。
ウィズドゥレットに会ったのは夢の中で、どうしようも無い状況だったのだ。
何かしら言及されると思ったけど、穏やかな表情で語りかけるウォームに安堵した俺は、ひとまず肩の力を抜いた。
「悪い夢でも見てたようだね」
「うん、まぁちょっと……。昔の記憶でもなかったからビックリしたと言うか……。夢の中でウィズドゥレットに会って、どうしようかと思った」
どう説明すれば疑われずに済むのか。
あれこれ言い訳を考えはしたけど、まずは結果を伝えた方が分かり易いという教えを実践してみた。
すると空いた席で寛いでた鳳炎が頭を持ち上げ、話を聞いていたウォームは、予想だにしなかった話題に間を置いてから対応する。
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