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「相手がそう名乗ったのかい?」
「うん。俺と同じ、今は伝説よって存在し、生かされてる者ですとか言ってたけど……。意味が分からなくて……」
けどウォームは、それが何を意味するのか分かっているようで__。
「今のフレムが分からなくて当然だよ」
再び間を開けた後に、神妙な面持ちで答えてくれたところからして、余り良い意味ではないのだろう。今度は身を起こした鳳炎が、俺の膝に前足を乗せてテレパシーで問う。
(他に何か言っていませんでしたか?)
「他に?」
そこで隠し持っていた物を出して見せると、くしゃくしゃになった紙を引き延ばして、思い出す限りの言葉を伝える。
「百聞は一見にしかずとか言われて……。右手にメモを握らせたから、必ず目を通すように言われたぐらいだけど……」
それが如何に重要なことか分からない俺は、険しい表情を浮かべたウォームにメモを手渡して反応を待った。
その間、鳳炎もこれが何を意味するのか分かっているようで。一通り目を通したウォームがメモを差し出して見せると、わざわざ人型に戻ってからメモの内容を確認する。
「メモの内容は、概ね理解出来るのですか?」
「うん、まぁなんとか……」
読めない文字で書かれてる訳じゃないし、心当たりが幾つもあるので。理解出来ない程の内容ではない。ただ百間にしかずと言われ、必ず目に通さなければならない代物とは、さすがに思えなかったけど……。
「なんかあるの?」
鳳炎の質問を素直に答えた後、空気が重く感じた俺は二人に尋ねた。
とりあえず、何かしらマズイ事になってきているのは直感で分かる。俺の命に関わる事なら、早めに教えてほしいんだけど__。
「どうしたんや?」
様子を見に来たストームの登場で、ウォームが咄嗟に話題を変えてしまう。
「なんでもないよ。それより、脱走企てて騒ぎを起こしてるとかなかった?」
「ひとまずはな」
どうやらストームには、知られたくない話題のようで。人型に戻っていた鳳炎は、持ってたメモ紙を隠してしまうと、通路を挟んだ座席に座ったストームは、俺と目を合わせてからにんまりと口角を上げて見せた。
(ねぇ、秘密にする意味なんてあるの?)
どう見ても隠し事に気付いてるストームの様子から、余計な事を言う前にテレパシーで質問すると、ポーカーフェイスを維持しながらウォームがテレパシーで理由を明かす。
(ストームは、あぁ見えて物知りだからね。迂闊に教えるとフレムの本名がバレて大騒ぎになるよ)
(マジか)
それも確信を得てないから言わないだけで、すでにバレてるような気がするのは、世話になる初日から鳳龍族の話題を持ち出してこられた記憶があるからだろう。
ーーやべぇな。
随分親しくなった事もあって、何でも話してしまいそうだ。気を付けないと……。
此の場は何とかやり過ごせても、タイミングを見計らって尋ねてくるだろう。
俺は念のため、誤魔化しネタを考えておくことにした。
【完/伝説にいかされてる者】
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