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第60話/渦巻く陰謀論
「さぁ着いたで。二時間の休憩タイムや!」
そう言って輸送機から降り立ったストームは、軽く背伸びをしてストレッチ。俺もずっと座ってたこともあって、凝り固まった背筋をほぐして久しぶりに足を運んだ施設を見渡した。
一見バルトトスや過激派の襲撃があったとは思えぬ程、落ち着いた様子だけど……。
上空から拝見したストームの施設は、所々壊れたままで。俺の魔力で急成長を果たした魔石は、円形のウニのような姿から菱形の結晶体へと変貌し、施設が管理している中央スペースでは手狭な印象を受けた。
「早いとこ会いに行こうか」
「うん。会って直ぐ話してくれそうな人なの?」
「ん~、機嫌によるかな。ちょっと気が強くて、思い込みの激しい女の子なんだよ」
「へぇ」
ーーそれって、大丈夫なのかな?
まぁ施設を反対する側の人間なのだから、正しいと思ってたことを否定されて不満もあるだろうし、女の子なら異性に対して警戒心を持ってても不思議ではないけど……。
「それより、フレムは何をどう話すんか考えとんのか? 移動時間を考えると、実質話を聞けるんは一時間くらいなもんやで」
ーーそうでした!
経緯を説明しないと失礼だろうし、相手の人柄によっては長話なんてもってのほかだ。
ストームに言われて考てみるけど、全く良い案が浮かんでこない。
ーーひとまず会うだけ会ってみようか。
此処まで来て引き返すのも申し訳無いし、二人が紹介したい人物が敵対勢力の女性というのも気になる。
ーー絶対訳ありだよな。
施設を悪く言うWPには警戒心剥き出しなのに、施設に不法侵入して損害を与えた過激派には寛容なんて可笑しな話だ。
まぁ案内にストームとウォームがいて、左肩に鳳炎が控えているのだから、何があっても対応出来ると思い。案内に従って移動すると、強引に改装されたとしか思えない鉄格子と南京錠付きの部屋に辿り着いて、内心ビックリする。
「此処やで」
ーー嘘だろ。
まずか弱い女の子を軟禁してるような印象の無いドアに、俺は絶句してしまった。
微かに魔力的なものまで感じるし……。
先陣きって入室する勇気も無いので、困惑した表情を浮かべて見せると、ウォームとストームが事情を説明してくれる。
「客間を改装したものだから、居心地は悪くないと思うけどね」
「急を要したけぇ、 魔法陣がもろ見えの部屋なんや。気分悪ぅせんといてな」
つまり相手は、過激派らしく。何ならの力によって、この施設を制圧しようとしたんだろう。何したの? と尋ねて良いかどうかすら悩んでいると、今度は簡単に事の経緯を教えてくれる。
「彼女の魔法は、声に出して詠唱することで成立する魔法みたいでね。ストームの魔法で、その声を四散させているんだ」
「ついでに魔法アイテムらしき物を含めて、武器も押収はしとるけどな。油断せんよう頼むわ。四散した声は、ワイが魔法で拾うさかい。気にせんこぉってな」
そう言ってストームは、早速施錠を解除し、ドアを開けて部屋にいる者に「あんさんに客人やで」と気さくに声をかけた時だ。
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