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「あっ。もしかしてセレナさんは、テレパシー使えなかったりします?」
失礼な質問とは思ったけど……。鳳炎のテレパシーは聞こえて、俺のテレパシーは聞こえないなんて。今までにない特殊な場面に遭遇したので、確認のため彼女に尋ねてみた。
すると彼女は、俺に対しムッとした表情を見せた後、悔しそうに理由を述べる。
「あちしは、選ばれし者じゃないので……」
「選ばれし者?」
「神之声はドラゴン様にしか聞こえなくて。ドラゴン様の声が聞こえるのは、兵士として遣えるためなのです」
つまり彼女の生まれ故郷は、ドラゴンに強いたげられた世界だったりするんだろうか。
その話を聞いた鳳炎は、困った様子で肩を貸す俺にアイコンタクトを送ってきた。
恐らく慰めたくても、ドラゴンである鳳炎が言うと逆効果の可能性があるからだろう。
そこで俺は、無い知恵を絞って確認会話で場を凌ぐことにする。
「えっと。つまりセレナさんは、兵士だからドラゴンである鳳炎のテレパシーは聞こえて。人間である俺のテレパシーは聞こえないってことですか?」
「てれぱしー?」
(私はドラゴンですが、神の代弁を務める程の器では無いという事です。ですから、どうか力を抜いて。ベッドにでも座って、お話をいたしませんか?)
すると素直に「分かりました」と答えた彼女は、ベッドに腰を下ろすと、早く来いと布団を叩いて俺に合図を送る。
(これは私が話を進めた方がスムーズかもしれませんね)
(俺もそう思う)
此処が生まれ故郷でないことは、理解しているようだけど……。身に付いたドラゴン絶対主義者は、今でも健在のようだ。
彼女の合図に応えるように左隣に腰を下ろすと、鳳炎が左肩から右肩へと身体を移して対応する。
(それでは、改めて自己紹介させていただきますね)
「はい」
(私の名前は鳳炎。フレム様の守護竜を任されている者です)
「つまり、ドラゴンが人間を守っている世界から来たのですか?」
(いえ。私が御主人に遣えているのは、私の意思で有り。私達の生まれ故郷は、共存を重んじる世界ですよ)
「そうなんですか。あちしの生まれ故郷は、神之声が聞こえるドラゴンを筆頭に、聖地を守るのが兵士の務めでした。でも此の世界に来てからは、ドラゴンの代わりに存在する。この世界の神様のために戦っているんです!」
そう言ってドラゴン絶対主義者のセレナは、俺の肩に乗る鳳炎に誉めてもらいたいのか。拳を握って、自信たっぷりに言ってのけてくれたけど……。
この世界の住人であるグレイから、神から見放された世界として聞いていた事も有り。
にわかに信じられなかった俺は、沈黙を保ったまま顎に手を添えた。
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