第60話/渦巻く陰謀論

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(御主人、大丈夫ですか?) (うん)  あれから、俺の意識は何処かにいったかのように(ほう)けていた。ーー(いな)。移動中の今でも他人(ひと)の話を録に聞いてないのかもしれない。  ドラゴンには寛容な彼女の長所を漬け込んで、鳳炎がセレナの証言を掘り下げて聞いてくれたけど……。神様の容姿は知らない。何処にいるのかと聞けば、施設の所為で分からないときたもんだ。 ーーそんなあやふやな情報で、       よく信じられたもんだなーー  案外彼女にとってバアルという存在は、明確な善悪を決めるための材料に過ぎないのかもしれない。 「セレナさんと行動を共にしてた人達も、バアルの信者さんだったりするのかな?」 「どうやろな?」 「いても少数派だと思うけどね」 「今まで聞いたことあらへんかったからな」  俺の質問に首を傾げたストームは、顎に手を添えて発言したウォームの意見に同調。  今までLiderを親しく情報交換していたとは思えないけど、墓の文化は無く。神に見放されたとも思えるような絵本の存在が、どうにも頭から離れなかった。 「Liderに聞いてみようか?」 「それなら報告として。セレナさんがこんなこと言ってるんけど、そそのかされたんじゃないか? て伝えたら、Liderの人が証言とってくれないかな?」  すると突然、前を歩いてたストームが足を止めて「それや!」と振り向き様に言うと、「後は任せときぃや」と俺達に親指を立てて走り去ってしまった。  ーー大丈夫かな?  俺に提案したのは、横を歩いてたウォームのはずなんだけども……。  俺が呆気にとられていると、やれやれと呆れたリアクションをしたウォームが、「先に搭乗しとこうか」と言って前を歩き出した。 「いいの? 任せちゃって」 「元々ストームの仕事だからね。それに悪い虫が彼女に付いてからというもの、随分気にしてたみたいだからね。お面を返上したいんじゃないかな?」  ーーわぉ♪  それは、ちょっと甘酸っぱい恋心を期待してしまいそうなお話だけど……。  彼女の第一声を思い出してほしい。  どう考えても仲が良いとは、思えないのですが……。 「あの、じゃあ裏切り者って言うのは?」 「多分ストームが、そのお婆さんから知り得た事を逆に利用して。悪いことをしてると思ってるからじゃないかな。フレンドリーな性格だから、人伝に聞いた情報量が半端ないんだよ。僕より顔が広いんじゃないかな」 「そうなんだ。ウォームは、そのお婆さんと面識はないの?」 「いや。二三回程会ったことがあるけど、挨拶する程度の関係かな。僕はストームと違って繊細だからね」 「へー」  冗談のつもりなら、もう少しおどけて言ってほしいもんだけど……。嘘つけと言わんばかりの相槌(あいづち)で返してやると、彼は「酷いな」と言って小さく笑った。  
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