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どうやら俺に冗談が通じて嬉しいようだ。
そこで多少鼻のつく言い方でも、笑って許してくれるんじゃないか。と思った俺は、ちょこっと調子に乗って言ってみる。
「じゃあそんな繊細な心をもったウォームさんは、その頃何をしてたんですか?」
「言ってくれるねぇ。その頃僕は、ラーリングと留守番だよ。セイクとウォーターは、ウェイクと食料探しをして。空が飛べるストームとサンダー、後カインドの三人は、近くに街がないか飛び回ってた頃だからね」
「へー……。あのラーリングが住んでいたっていう家から?」
「そうだよ。何が起きたのか分からないけど、ラーリングは戦闘経験のない一般市民だからね。当時のスフォームは、余り表に出たがらなかったし、僕が留守番ついでに食事の下準備をしながら待ってた感じかな」
つまり最初っから所持してた魔石を活用して、この世界の土地改良を行うつもりなんて無かったのだろう。それこそ此の世界の住人に助けられ、その恩返しになるならと、やるしかない状況になったのかもしれない。
「やっぱり俺の知らないところで、いっぱい苦労しているんだなぁ」
断片的だけど記憶が戻って、人との繋がりが出来た事で、ようやく周囲の苦労に目を向けられるようになってきたけど……。
昔の俺ならどうしてあげてたろうか?
案外形振り構わず、死物狂いでウォームとラーリングを探し出して、連れ帰るぐらいの実力があったのかもしれない。
ーーだけど今の俺は?ーー
何かしてあげれることがあるんだろうか?
我ながら無力だと思い知られ落胆していると、ウォームが俺の様子を気にして話しかけるより先に、前方から走ってきたLiderの隊員から連絡を受ける。
「失礼いたします! WPのムグル殿から連絡が入っております」
「あー、お出迎えのことかな? 検問前までフレムを迎えに行くのに、Liderの許可をとらなきゃいけないとか言ってたから」
ーー厳しいな、おい。
検問前もLiderの敷地だからなのか。
相変わらずの溝の深さに苦笑いを溢した俺は、ウォームの案内で輸送機の中にある通信スペースにお邪魔した。
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