第60話/渦巻く陰謀論

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「モニターはないんだね」 「スペースの都合でね」  何触ってもいけないような沢山のボタンに、閉塞感が堪らなく不安になるのですが……。ヘッドフォンを付けて待機していたLiderの隊員が席を譲り、まず最初にウォームがムグルに話しかける。 「お待たせ。……ごめんごめん、寄り道の最中で……。交代人員が確保出来なくて……そう。……あ、やっぱりそうなったんだね。ご愁傷様。……本人に変わろうか? 後ろに待機してもらってるんだけど……うん……。分かった。じゃあ、Liderのご厚意に甘えさせてもらうよ。……うん、北ね。了解。フレムに変わるよ」  随分親しげに話してヘッドフォンを外した土下ウォームが、何かしらのスイッチを押してから席ごと譲ってくれた。 「響くから、相手の話が終わってから話しかけた方が良いよ」 「分かった」  ヘッドフォンを付け、マイクを引き寄せるように柄を曲げると、横からウォームが再び何かしらのスイッチを押したことによって、ムグルの声がヘッドフォンから聞こえてくる。 [もしもし? フレム君] 「はい」 [無事だったんだね。交戦したって聞いてビックリしたよ] 「すみません。俺は龍碑と竜祈を召喚したぐらいなんですけどね。攻撃は鳳炎が全部弾いてくれたし、本命は俺じゃなかったみたいなんで」 [本命はフレム君じゃない?] 「あ、その辺の話はまた後で」 [そうだね。ウォームさんに伝えたけど、送迎はLiderに頼む事になったから。ボク等は自宅待機しておくよ] 「相変わらず信用されてないんですね」 [だけど前に比べて、スムーズに情報交換してる方なんだよ。もし気分が悪くなって、予定が狂いそうだったら連絡してね。ボクとしては、君の健康状態が最優先だから] 「有難うございます」 [それと、お昼の準備はしておくよ。お泊まりはNGのようだからね] 「はい。それに約束もあって、長居出来そうにないんですよね」 [分かった。じゃあ出来るだけ要点をまとめて、過去の出来事については手短に済ませるから。手土産ヨロシクね]  ーーマジか。  どいつもこいつも情報に飢えているのか、いいように利用されてる感が半端ないんですけど……。俺は負けじと言い返す。 「じゃあランチはデザート付で」 [OK。他にご要望は?] 「他にですか? 随分大盤振る舞いですね」 [相手がフレム君だからこそだよ] 「そんな、買いかぶり過ぎですよ」  何よりLiderと比べて施設と対立してる事から、裏があるのではと勘ぐってしまう。 「そろそろウォームに変わりますね」 [ボクが怖かったりする?] 「え? いや、そんなことはありませんよ。先日、要らぬことまで言って注意を受けたばかりなんで。墓穴を掘る前に撤退します」  ーーと、ここで控えていたウォームが、俺からヘッドフォンを抜き取るように奪い。  ムグルから離れる口実を作ってくれた。
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