第61話/厳重な引き渡し対象は俺です

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 ーー言えてる。  それに神の化身だとか女神とか、怖れられてる割には神聖的な扱いをされてるアスタロスをどこうこうしたら、何言われるか分かったものじゃない。  だけど、そんなウォームの返答に、ストームが要らぬ知恵をよこす。 「フレムが何か知っとる可能性は、考えとらんのか?」 「フレムが? それなら僕らに、何か言ってくれてもいいはずだけど」 「……絶大な信頼を有難うございます……」  だけど俺は、嘘を吐きたくないので……。  ウォームと目が合っても、知らないとは言い出せなかった。 「……目を逸らしたね……」  迷いもあって黙っていると、ウォームが目を泳がす俺を見逃してはくれず……。ストームが「ほらみぃ」と言って腕を組んだ。 「だいぶフレムの性格が分かってきたで。確証のない情報や自分に責任が降りかかりそうな話は、黙ってやり過ごすか。上手いことはしょとるやろ?」 「だって、この世界の情報じゃないし……。 もし本物の悪魔や神様だとしたら、どうするつもりでいるの?」  返答次第では、俺が知ってる情報を与えない方が良いに決まってる。今の俺は、我が身を守ることすら危うい実力なのだ。  しかし「え?」と声を漏らしたストームは、ウォームと黙って顔を合わせーー 「まさか、好奇心だけで聞いてた?」  返答に困ってるようにも見受けたことから、俺が感じた事を尋ねてみれば、図星だったようで苦笑いを溢した。 「俺も何となく、ストームの性格が分かってきたよ」 「そら嬉しい限りやわ」  恐らく彼は、知的好奇心が強い性格で。  面白いと感じた事や興味をもった物事に対して、とことん追究してしまうのだろう。  だから単純に知りたいだけで、世界を救うとか大それた目標というものは無いと見た。 「要は暇潰しに俺の話を聞きたいんだね?」 「まぁそうやな。フレムはワイの知らん世界におって、この世界のように魔法を使えた訳でもあらへんのに、魔法の基礎知識があるやろ?」 (そうなの?)  ストームが言う〈魔法の基礎知識〉が分からず、隣に座る人型の鳳縁にテレパシーで質問すると、前置きとして(まぁそうですね)とテレパシーで答えた鳳炎が代わりにストームの質問に応えてくれる。 「今まで御主人が英里さんとして生きてきた世界の住人は、非常に想像力豊かで。無自覚に様々な世界を視る人で溢れていましたから、そもそも知識や情報といった認識はなく。娯楽なので、御主人が首を傾げるのも無理はありません」 「つまり勉学で学んだやのうて、遊びの一種言うことか?」 「閃きやアイディアで設定された世界が、まさか実在してるとは思わないでしょう?」  確かに、見て来たのではないかと思わざるをえないような世界観とキャラ設定。特に俺が英里として生きていた日本は、アニメや漫画がずば抜けて有名だった。  
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