第61話/厳重な引き渡し対象は俺です

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「それじゃあ家の中に入るのは、国賓であるフレム様とその守護竜である鳳炎様の二人でいいのかな?」 「僕らが同席して、事情聴取にならなかったと言われても困るからね」 「それならいいけど……。フレム君。念のため、ちょっと耳を塞いでから門扉を潜ってくれないかな?」 「門扉を?」 「うん」  明らかに何か仕掛けでもあるんだろう。  確認のためウォームに尋ねたムグルは、俺に指示をしてから道を開けてくれた。 「何があるの?」 「凶器となる物は持ち込み禁止だからね」  不安からストレートに尋ねてみれば、門扉が持ち物検査の役割を担っているようだ。  言われた通り、耳を両手で塞いでから門扉を潜ると、パパんと爆竹がはぜたような音がしてビックリしたけど……。  ーー何だ? コレーー  玄関ポーチに四散する見覚えの無い残骸。  その場にしゃがんでよく見てみると、精密機械のようなので、恐らく盗聴機だろう。  WPは情報漏洩しないよう、未然に盗聴を防ぐ技術を持ち合わせているようだ。 「申し訳ないけど、こっから先は企業秘密満載だからね。盗聴はお断りするよ」 「さすが鉄壁の防御力だね」 「車内に待機してる人には、お得意の魔法(ちから)も通用しないから。悪しからずと、お伝え願うよ」 「聞こえてるだろうけどね」  顔は見せないけど、窓は開いたままなので。ムグルは、わざと聞こえるように伝言をウォームに頼むと、門扉の前に立ちふさがって別れの挨拶とする。 「それじゃ、確かにフレム君は預かったよ」 「お手柔らかにお願いしますね」 「お時間になりましたら迎えに上がります」  空気がちょっとピリリと緊張が走った気がするけど、目的を果たしたウォームとルシウェルは大人しく身を翻して退散。  護送車を含め、俺が乗ってきた高級車が立ち去ったことを確認してから。ムグルは、肩の荷を下ろして門扉を閉めた。 「愛されてるね、フレム君」 「それ程でも」  褒め言葉だけど、それによっての不都合が半端なさそうだなぁ。と思った俺は、複雑な気持ちで言葉を返した。  まさか教皇までもが、WPに俺を取られまいと対策を講じてくるとは、夢見も思わなかったからである。 「ご迷惑をお掛けいたします」 「それ程でもないよ。これを機に、フレム君と対話出来る機会が増えると良いんだけど」 「俺もそう思ってます」  ずっと避けられてると勘違いされてても困るし、友達の事も気になる。それにウォーム達が抱える問題を俺独りで解決出来るとは、さすがに思えなかった。 「そう言ってくれると嬉しいよ。施設では、僕らの評判が悪い事は知ってたから。警戒して会ってくれないんじゃないかと、思ってたところなんだ」 「そんな事は……。ちょっと大体な事をされてるな、とは思いましたけど……」 「御薙くんと華さんの事かい?」 「いえ。以前ストームの施設いた時、無断で施設を嗅ぎ回るようなことをしていると、聞いたもんですから……」
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