第62話/我が身を守るためには

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「まったく。後で紹介してあげるよ、って言ったのに……」 「好奇心に負けたんですね」  ーー気持ちはよく分かる。  現在進行形で俺も盗み聞きしていた人が気になり、せっかくのチャンスを水の泡にしてしまった気分だ。  けど盗み聞きしていた二人の事情を知るムグルは、呆れた様子を見せながらも「まぁ無理もないか」と前置きして話を続ける。 「君が英里さんとして生活していた世界を知る。緻禅(ちぜん) 由梨(ゆり)さんと穂聖(ほせい) (じん)くんだよ。育ちだから、西日本育ちの英里さんとは顔見知りじゃないと思うけどね」  そう言ってムグルは、一旦ドアを閉めた。  まだ彼らを紹介するのは早い、と判断したんだろう。惜しい事をしたと思った反面、ムグルが関東を知ってることに関心を抱く。 「ムグルさん、関東とか知ってるんですね」 「フレム君の話を少しでも理解したくって、華さんや御薙くん達に色々教えてもらったんだよ。ボク等の間では、information(インタメーション) world(ワールド)と呼んでいる世界のことをね」 「い、インタメーション・ワールド?」  鳳炎から聞いたことがない単語が飛び出して、オウム返ししたけど……。聞いたことのある発音からして、英里として生活していた世界の言語なのだろう。ムグルは、教えてもらったことを思い出すように説明する。 「エイゴ? っていう言語で、情報世界って言う意味らしいんだけどね。その世界に辿り着くためには、情報体でなければならないルールがあるとかで。魂となって行き来するか、ラジオ、テレビ、パソコンなんかの。情報を発信する機器を利用しなければ、ボク達の存在が認知されない世界の事だよ」  そう言って席に歩み戻ってきたムグルは、興味津々で話を聞く俺を見て。嬉しそうに口角を上げてながら椅子を引くと、腰を下ろして話をまとめる。 「要は生身の肉体を転移させようとすると、世界の浸食に合い。死に至る世界であることから、ボク等がと言われているんだ」 「じゃあ世界の浸食? て言うのは?」 (その世界の秩序に従って、身体に(およ)ぼす影響のことです) 「今フレム君の肉体は、持ち前の耐性能力で異世界に順応しているんだけど……。それは、海底に行くなら潜水艦に乗ったり、酸素の無い宇宙でも活動出来るよう。身体が自動的に宇宙服の役割を担っているからだよ」  俺が理解出来ないとばかりにオウム返しすると、鳳炎がテレパシーで補足。更にムグルが説明を追加することで、彼らが言いたい影響が何となくイメージ出来た。 「だけどinformation(インタメーション) world(ワールド)は、それが通用しない。行くとしたら、自身の代役を情報体……。えっと、アバターって言えば伝わるかな?」 「うん」 「それを作って、情報体として紛れるか。夢を介して会うことしか出来ない、特殊な秩序で守られた世界なんだよ」
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