第62話/我が身を守るためには

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 つまり目の前にいる陣と由梨は、鳳炎やウォームと同様。昔の俺を覚えているということだ。俺は、残念そうに「それもそうね」と同意した彼女を見て。心を痛めながらも、先に「ゴメンね」と謝ってから提案する。 「だけど、陣にさん付けすると違和感があるのは俺も同じだから……。慣れてきたら、百合さんも呼び捨てにさせてもらうよ」 「そうこなくっちゃな♪」 「で、さっきの質問はどうなの?」 「あー、夢渡りのこと?」  まだムグルに詳しい話をしてないのに、二人に喋ってしまって良いのか分からないけど……。記憶曖昧だし、好奇心旺盛な眼差しを向けてくる陣と由梨に負けて話してみる。 「夢渡りして来たんだろうとは、思うんだけど……。ムグルの話を聞く限り、幾つか不思議に思うことがあるから。絶対とは言えないんだよね」 「どういう事だよ」 「information(インフォメーション) world(ワールド)に肉体を持っていけないような話を聞いたんだけど……。そうなると、トラブルで此処(ココ)に迷いこんだ俺は幽霊じゃないと可笑しいと思うんだよね。今のところ、此の世界に俺の肉体があるから立ち寄った。ていう記憶かないから、言えることなんだけどさ」  前のめりに尋ねてきた陣の質問に、出来るだけ丁寧に疑問に感じた点を伝えると、何が言いたいのか分かったようで。隣の席に移動してきた由梨を一瞥した後、陣は構わず情報提供をしてくれる。 「そう言やぁウォームって奴の報告によると、見回りしてた敷地内に倒れてたらしいぜ。巨大化した鳳炎がお前を守るために、翼を使って覆い被さってたみたいだけどな」  そこで俺は、隣に控える小型ドラゴンの鳳炎に視線を向けるけど、テレパシーなどによる返答も弁明も無かった。  ーー彼の情報(はなし)が正しいという事だろうか?  起きたらウォームが管理している施設内で、ギフトの存在や夢渡りのことを知らなかったから気にしなかったけど……。  ウォームを100%信じてる訳じゃないので、どうしても疑いたくなってしまう。 「夢渡りって。肉体から離れた魂が、夢を渡って異世界に行くことを言うんだよね?」 「そっ。だから俺達は、生まれ故郷に保存してあった肉体に戻って活動してんだけどさ。その様子を見ると、肉体が何処に保管されてたのか知らないのか?」 「知らない、と言うか。覚えてないけどね」  俺は正直に陣の質問に答えた後、再び椅子を止り木代わりにしている鳳炎を見た。  相変わらず黙り込んでるけど、相手に圧力をかけるような鋭い眼光でちょっと怖い。  陣もさすがに、これ以上不安にさせるような話はマズいと思って取り繕う。 「ま、まぁムグルの話によると、あんたの守護竜は本物みたいだから自信持てよ」 「それは偽物がいるてこと?」  そもそも俺は、何を基準にして本物の守護竜だと言われてるのか知らないけど……。  陣は、「まぁな」と肯定してから答える。 「守護竜との(ちぎ)りがどんなもんなのか、知らない奴が大半過ぎて。主を守ってるドラゴンは、皆守護竜認識なんだとさ」 「実際は、主と特別な契約を交わしているドラゴンを差しているんだって」 「そうなんだね」
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