第62話/我が身を守るためには

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「でも最近、夢の中で会いました」 「それはウォームさんから報告を受けいるよ。フレム君は、ウィズドゥレットが何者なのか覚えてなさそうだから。不安だって」  それを聞いて、俺は内心ホッとした。  WPとの仲違いは続いてるようだったから心配してたけど、WPPO所属のムグルとの仲は良好そうだ。それとも俺が考えている以上に、ウィズドゥレットを危険視しているのか。話を聞いたムグルは、組んだ両手をテーブルに置いて話を続ける。 「ボクも正直不安だよ。あのウサギが動き出したということは、再び伝説が現実と結びつくことになるかもしれないからね」 「あの、それは悪いことなんですか?」  そもそもムグルが言う〈伝説〉がどういったものか分からない俺は、内容を尋ねても理解出来ないと踏んで結論を求めた。  けどムグルも、悪いと言い切るには要素が足りないと思ったのだろう。悩ましげに「ん~」と唸った後に出した結論は、善悪を決め付けようのないものであった。 「どっちとも言えないかな。ボク達としては、君が伝説に利用されてるようで嫌なんだけどね。昔の君は、その伝説があるからこそ生かされているんだと言ってたよ」 「伝説によって?」 「その言われは、君の両親が本来子を宿さない不老の肉体で。その伝説通り、君を身籠(みごも)った事から。周囲に伝説と呼ばれながらも、認識としては予言書となった経緯があるからこその発言だと思うけどね。ボクも本当のところは知らないんだ」 「そうなんですか」 「でも今尚語り継がれる有名な話だから。君の正体を知って、嫌な顔をする人達も少なからずいることを知っといて。ボクは、長い付き合いもあって。君か悪い訳じゃないことぐらい知ってるから、どうしてもね。ウィズドゥレットと聞くと虫酸(むしす)が走るんだよ。敵わない相手と、分かってるから尚更ね」  それじゃあ昔から俺と付き合いがある守護竜の鳳炎やウォームも、同じ類いなのかもしれない。話題にだすと良い顔されないし、だからと言って俺を避ける事なく心配してくれるのだから有難いことだ。 「因みに、そのウィズドゥレットっていう人の他に。敵に回したくない人とかって、いるんですか?」 「そりゃあいるよ。個人的にスフォームは、余り敵に回したくないタイプだね。人の心を読む事が出来るみたいだし、魔族を敵に回して、無事に仕事が完遂できるのか。不安な部分があるからね」 「それはスフォームよりムグルさんの方が弱い、と言う理由ではなさそうですけど?」  俺はムグルの表情のに合わせて問い方を変えると、彼はニヤリと口角を上げて「単純に裏がありそうって話だよ」と答えた。 「凄い自信ですね」  警察官だし、異世界に派遣されるぐらいなんだから。実力がなきゃ可笑しいとは思うけど……。相手を年下扱いする程の自信は、何処からくるのか。ちょっと不思議に思う。
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