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「そう言うフレム君は、相手が魔族でも怖くなさそうだね?」
「そうでもないですよ。ただ普通の魔族とは違って、月の民であるラーリングに宿った魔族なんで。余り怖くないだけです」
「月の民って、あの幻の?」
「ご存知なんですか?」
「知識だけではあるけどね」
しかもムグルの様子からして、スフォームが月の民に宿った魔族であるとは知らなかったようだ。顎に右手を添えて、何やら考え込み始めた彼の表情が厳しくなっていく。
「もしかしてフレム君が施設に拘る理由は、その月の民にあったりするのかな?」
「まぁ、そうですね。それもあります」
記憶が多少なりとも戻り、知り得たことが有りすぎて、怖いから逃げると言うことは出来ない所まで来てしまったようにも思える。
鳳炎達の力を借りなければ、録に戦闘も出来ないのに……。さすがに何か言われるんじゃないかと思って黙ってしまうと、ムグルが「まぁ、そう言うと思ったよ」と言って頬杖をついて提案する。
「それじゃあ君の戦闘能力を上げしてしまった方が早いかもしれないね。勿論命を狙われてしまってるからには、ボク等も出来る事はするつもりだけどね」
そして、黙って見守る鳳炎にテレパシーで同意を求めたのか。少し間を空けてから、ムグルは再び声に出して言う。
「運命に立ち向かうからには、勝ってもらわないと夢見が悪そうだからね。全力でサポートさせてもらうよ」
ーー運命?
俺は、世話になっている人達ためにも、出来ることがあればしてあげたいと思っての事だったりするんだけど……。
この時はまだ、彼の言う〈運命〉の意味を知る由がなかった。
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