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第63話/今も昔も変わらぬ思考回路
「あっ。そう言えば、ウォームさんから報告は受けてるけど。実際、どのくらいの属性を魔法で扱えるの?」
あれから場所を移動しようと提案され、席を立ったところで俺は一時停止した。
ーーウォームは、
どこまで話してんだろう?――
嘘を吐いて自身の評価を下げたくないけど、まともに話してウォームが悪者扱いされるのも嫌なので考える。
虚言は罪になるだろうから、このまま黙っている方が良いかもしれない。注意深く相手の顔色を伺っていると、簡単に答えない俺を見て、困ったように眉を潜めたムグルが言葉を続ける。
「心配しなくても罪には問わないよ。そもそも君は、鳳龍族と呼ばれる稀少な人種だからね。全属性扱えると思うんだけど、記憶障害で使えない属性を把握しておきたいんだ」
「全属性?」
それが本当なら、かなり最強な存在だと思うけど……。幾ら記憶を司る海馬に頼っても、使用出来る属性は手の平で数える程度。多分光とか闇属性なんかもあったりするんだろうけど、知識すら乏しかった。
「無属性含めても、七属性しか……」
「という事は、半分以上使えないんだね」
ーー半分以上?!
何属性あるのか知らないけど、14属性以上あるとしたら、記憶障害でかなり力が衰えている状態である。
最強であっても、運がなければ死んでいるだろうから。ここは、さすが守護竜様々と言うべきかもしれない。
(ですが、威力はさすがなものですよ)
「みたいだね。それに街中で魔法を使っても、見事なコントロールだったと聞いたよ」
「誰から?」
「御薙くんの守護竜だよ。そろそろ移動先で話そうか。此処は時間に猶予がないからね」
そう言って席から離れたムグルは、廊下に繋がるドアを開けると、2階に聞こえるよう「ボク達は〈時の間〉に移動するよー!」と大声で伝えてから、後方で足を止めていた俺達を手招きして部屋を案内し始める。
「まぁ移動先は近いんだけどね」
実際廊下を出て、2階へと上がる階段の真下にあたる壁を押すことで現れた隠し扉を潜ると、手狭な部屋からエレベーターを使用して地下へ移動。途中から、見た目以上の敷地を有している家だと思ったがーー。
「どういう仕組みですか?」
機械仕掛けではなく、全て魔法が使用されていると見抜いた俺は、ムグルの後を追いかけながら問うた。すると彼は、振り向き様に人差し指を口元に添えて答える。
「企業秘密♪ とりあえずLiderに説明しても理解できない異空間だよ」
「でしょうね」
まさにファンタジックな仕掛けだ。
しかも到着した地下通路は、コンクリートにしては艶やかな白い壁と電灯らしいきモノが見当たらない明るい天井。青い誘導ラインは、まるで近未来をイメージさせるような映像技術のようであった。
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