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「因みに、生年月日や名前をパスワードに設定することは出来ないよ」
「じゃあ、ウイングはダメなの?
W・I・N・G 4文字だけとさ」
すると早速復唱したムグルは、10秒もしない内に「ダメだって」と答えた。
「昔と思考が変わってなければ、結構単純なパスワードにしてそうなんだけどなぁ」
ーー誕生日とか何時なんだろ?
生年月日でなければ数字は入るはすだ。
だけど生年月日を逆さまにするだけでは、防犯上よろしくなさそうだし……。
「F・W・11」
俺が閃いたパスワードを口にすると、ムグルが再び復唱してーー。
「開いた」
「へ?」
拍子抜けするぐらい、簡単に解除出来てしまって。俺は、間の抜けた反応を返した。
「凄いですね、御主人」
「たまたまだよ、たまたま」
記憶が戻ってるわけじゃないし、単純なパスワードじゃないと覚えていられないのだから。嫌でも自分に関係のあるものだろうと、イニシャルと誕生月を組み合わせただけだ。
それも英里だった癖で11月を当てはめてしまったけど、単純な俺の事だ。英里と同じ11月生まれか、パスワードを求められた月が偶然11日だったとかに違いない。
とりあえず必要なファイルが閲覧出来るようになったからといって、直ぐに分かることではなかったらしく。電話先のフェリアスに「要点を絞って、フレム君との繋がりを調べてくれるだけでも良いよ」と、相手の負担を考えて折り合いを付けると電話を切った。
「何とかなりそうだよ。ざっと調べてもらっただけでも、君の協力者として登録されてる人物だってことが分かったからね」
「協力者?」
「警察関係者として、特別に捜査が出来る権限を持った人のことだよ。どうやら彼は、フレム君の代わりに<カードに封じられし者>について調べてくれてたみたいなんだ」
「あー。だから夢の中で、ウォーム達の目を盗むような形で待ち合わせてしてたのか」
「覚えがあるんだね?」
「夢の中での話、ですけどね」
随分強調して問われたような気がして、意図的に隠してた訳じゃないと伝えるように俺は返答した。内容を覚えてないだけで、見てる夢が全て記憶という訳じゃないし……。
内容を覚えていても、顔を覚えていないこともあるので区別が難しいのだ。
「因みにムグルさんは、そう言う仕事に関しての話は?」
「知らないよ。守秘義務があるから、仲間内でも知らないことがあったりするんだよね。フレム君にパートナーがいれば別だけど」
「あれ? ムグルさんじゃないんですか?」
記憶にはないけど、てっきり俺と組んでたから警戒心が薄いのかと思ってたけど……。
彼は、申し訳なさそうに否定する。
「もう億が付くぐらい昔の話だよ。一定の階級を維持できるようになると、指導や監督責任を勤めるよう定められてるから。今は別に相方がいるんだ」
「そうなんですか」
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