第63話/今も昔も変わらぬ思考回路

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 つい身構えた様子で尋ねると、ムグルは確信を得たような微笑みを浮かべ。まず手の内を見せるように、大まかな情報を口にする。 「彼の行動範囲が表から裏に変わったようなんだ。しかもアナトを退治するのに、死神ならではの特殊能力を使わなくなったんだよ」 「魂の救済、でしたっけ?」  確認のため片付けを終えた鳳炎に目配せすると、彼は静かに頷いて発言を控えた。 「君達の知り合い、という訳ではなさそうだね。彼に会いたがってる噂を耳にしたんだけど、心当たりは?」 「ありますよ。落とし物を拾ったので、彼にお礼も兼ねて直接渡そうかと思って」  そこは素直に話しておくべきだろうと思って、ポケットに忍ばせていた落とし物を出して見せると、ムグルが手を伸ばしても届く食卓テーブルに置いた。 「指輪?」 「触っても大丈夫ですよ」 「__魔法アイテムじゃなさそうだね」  軽率に触ろうとせず、魔力を宿した代物ではないことを確認した後、ムグルは落とし物を手にしてーー。 「……。」  指輪の内側に彫られたネームを確認するや、険しい表情を浮かべて卓上に戻した。 「もし彼に会うつもりなら、独りで会うような事はしないようにね」 「約束のことがあるからですか?」  詳細は思い出してないけど、俺からの問い返しにちょっとばかし驚いた反応を見せたムグルは、コメントを控えるように「まぁね」と答えて。預かってきた質問用紙を俺に差し出し、話題を変えてしまう。 「続いて質問に入るけど、まとめる暇がなくてね。同じ質問は(はぶ)いていって良いよ」 「お茶でもいれましょうか?」 「お願いします」  厚みはないが、ビッシリ質問事項が書かれた用紙から〈経緯を知りたい〉という大雑把な質問をデカ文字で書かれているものもあり。1つ1つを丁寧に答えていると、日が暮れそうだと素で思った。  さらに一通り目を通した俺と目があったムグルが、ついでとばかりに「ボクからも質問したいんだけど、いいかな?」と尋ねてきたので。一旦質問用紙をテーブルに伏せた俺は、特権を行使する彼に「どうぞ」と営業スマイルで答えた。  すると、ご満悦な表情を浮かべたムグルは、クイズ番組の司会のように淡々と質問だけを述べていく。 「じゃあ率直にWP(ワッポ)の印象は?」 「あんまよろしくないです」 「WTPOと直接連絡をとったことがある?」 「ありません」 「そもそも直接君と連絡が取れる手段が無い、っていうのはホント?」 「て言うか、立場的に無理です」 「立場的というのは?」 「あくまで見習い身分ですから、黙って通信機器を使う勇気はありません」 「それじゃあLiderとの連絡も、ウォームを介して?」 「そうですね。どうにかしたければ、頑張って信頼を勝ち取って下さいませ」  最終的に何が言いたいのか分かった俺は、無理難題な事を言われる前に、一番の原因を突き返した。幾ら俺が信用を積み重ねても、限界というものがある。
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