第64話/最強にして最弱でした

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「少しは思い出してくれた?」 「詳細や経緯までは思い出せないけど……。 裏切れない理由は、何となく分かったよ」  だけど腑に落ちないのは、ムグルの腹が読めないからだろう。俺に弱い立場である事を明かすことで、何の利益があるのだろうか?  戸惑いを隠しきれず、ひとまず家臣としての挨拶を終えたムグルが立ち上がると、今度は鳳炎が俺に話を持ちかける。 「そこで、あの……。御主人に御相談なのですが……。ムグルさんは、どんな理由であろうと、ウォームさんを許せないそうです」 「あっ。は俺の家臣だから、ウォームの立場を知ってるのか」  自分の方が立場が上だと理解した途端、勝手に呼び捨てにしたけど……。呼ばれた本人は、にっこり嬉しそうな様子で「まぁね」と肯定してから不満を(さら)け出す。 「今は、魔族のスフォームが雇い主だと言って訊かないんだけど……。君は何処まで把握しているのかな?」 「あ~、えっと……。とりあえず、ウォームの前では知らない振りをしてるつもりだよ。助けを求めるようなタイプに見えないし、ややっこしいことになってるんだよね」  ここで俺は、鳳炎の時と同じように思い出した事とは別に、ウォームが考えていそうな想定を(まじ)えて現状を暴露。すると、軽い口調で「なるほどね~」と理解を示したように見せかけて、にこやかに「いっそ(しめ)ようか」とムグルに提案された。 「いや、あの……。もっと穏便な」 「出来ないと思うよ。は、ラーリングって人を助けたいんでしょ?」 「だけどとしては、ウォームも」 「それが甘いって、ボクは言いたいんだよ。だから家臣であるボクを頼って欲しいんだ」  そこで俺は、ピンと閃いてしまった。  ムグルの企みと鳳炎が言う相談の意味が、俺が導き出した答えならば……。  主として、望んではいけない結末である。 「は、WPとして参戦しているんでしょ?」  思い違いかもしれないので、わざと優しく尋ねてみると、俺の言わんとする事が分かったようで黙ってしまう二人。  恐らく彼等は、カードの持ち主である魔族のスフォームを殺してウォームを取り戻せないのなら。一旦ウォームを殺してカードに戻す事で、スフォームからの支配から解放しようと考えたのだろう。 「ですが御主人、ウォームさんは強敵です。もし敵に回ってしまったら」 「鳳炎。だからと言ってが手を下すと、ウォームは悪者になってしまう。それにウォームを取り戻したい一心で、鳳炎やムグルの手を汚すような提案は出来ないよ」  すると今度はムグルが、深い溜め息を吐いてから俺に質問する。 「君、本当に記憶がないの?」 「ないよ。ないけど、記憶が戻った時に後悔しない選択は出来るよ。大体本気で()りたかったら、(オレ)の許可いらないよね?」
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