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「じゃあ本気で見習いを?」
「うん」
「その割りには、随分出しゃばってるよね」
何が言いたいのか、何となく分かるけど……。頼りにされるのは嫌いじゃないし、今のところ面倒事は全てウォーム達が片付けてくれているので比較的に楽だ。
それに見習いとしてするべき仕事ではないにしでも、様々な情報を得られるようになったのは大きな収穫である。俺が苦笑いで此の場を誤魔化そうとすると、鳳炎が懸念を抱くムグルに向かって言葉を返す。
「御主人が丁寧にご説明することもあって、意見が採用され易いんですよ。最近ストームさんが味方についてたり、スフォームさんも条件付きで承諾して下さいますので。随分発言力が増しているように感じるかもしれませんが……。御主人は、きちんと上の立場にお伺いを立ててから実行しているですよ」
「律儀だね」
「ですが、御陰で情報は得られるようになりましたし……。単独行動が許されないのは、体調の急変を気遣ってのことですから。最低でも守護竜である私が付き添えば、問題ないとのことです」
「じゃあ彼等がフレム君に通信機器を使わせないのは?」
「お人好しが祟って、WPに利用されないか。本気で心配されてるのではないでしょうか」
「就職して、一月も経ってないからとかじゃなくて?」
俺自身仕方がない事だとは思っていたが、鳳炎の見解に質問すると、手短に「はい」と肯定した後に尤もな意見が返ってくる。
「今や御主人とWPの繋がりを知る者は、ウォームさんだけではありません。WPとして働いていた記憶がないにしても、御主人の御友人が働いているのは事実ですし、奪われる危機感が無い方が可笑しいと思いますよ。魔石の他に、ラーリングさんの問題がありますからね」
ーーそうでした。
ラーリングとの繋がりを思い出したのは良いけれど、直接会って話してみないと分からない事が多くて、俺自身困ってるぐらいなのだ。危機感を覚えるのは当然かもしれない。
「フレム君、プライベートでも頼りにされているんだね」
「重要な事は、カミングアウトしてないけどね。多少なりとも記憶が戻ってきたから、ほっとけないだけだよ」
それにスフォームが悪さをしているのだとしたら、ラーリングに関わる事のはず……。
大事になる前にそれらを解決して、スフォームに罪を重ねないよう促すのが俺が出来る最大限の事だろう。
「君も命を狙らわれているのに、大丈夫?」
「そこはWPの仕事ですよね?」
「そうだけど……。WPPOとしては、もっと早い段階で頼ってほしかったな」
「すみません」
都合が良い事を言ってるのは百も承知だが、俺の知らない所でかなり奮闘してたんだろう。俺は申し訳ないとばかりに、頬杖を突いたムグルに謝罪した。
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