第64話/最強にして最弱でした

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「気ぃ遣わせてしもうたな」 「何かあったんですか?」  二人にお茶を出したグレイが尋ねると、黙って茶を飲み出したストームに代わって、目が合ったウォームが単刀直入に答える。 「フレムの命を脅かす人物が現れて、今WPに護衛を頼めないか話してるところだよ」 「フレムに怪我はないんですか?」 「ないよ。その代わり、君の身の安全を保証出来そうにないから。解雇か、別の部署に移ってもらおうと考えてたんだけど」 「ちぃと予定変更やな。囲まれたで」  そう言ってストームは席を外すと、玄関の覗き穴から外の様子を伺った。 (狙いはワイ等やない、グレイや)  見慣れた白い衣服と紋章から、相手が馴染みのあるLiderだと判断したストームは、おおよその人数から目的を推測して、テレパシーをウォームに向かって送った。  そこで席を立ったウォームは、家主であるグレイに「借りるよ」と一言告げて、部屋にあった電話からルシウェルに連絡。もし連絡先が偽りだとしたら、騒ぎ立てるしかないと考えていたが__。 {お呼びですか?}  仲介役にルシウェルの名とidentifier(アイデンティファイアー)を伝えると、間髪無く本人と繋がって安堵する。 「ルシウェルさん。部下を連れて、至急504(ごーまるよん)号室に来てください。ご説明は後から致します。」  すると異変を察したルシウェルは、{部屋から出ないで下さい}と指示を出してから電話を切った。 「なんやて?」 「部屋から出ないようにってさ」 「ほんならチェーンロックしとくで」  けど何が起こっているのか分からないグレイは、得たいの知れない恐怖と不安から身を守るためにソワソワし始める。 「え? あ、あの。自分、どうしたら……」 「大丈夫だよ」 「グレイはこのまま、実家に残るんか?」 「__説明無しですか?」  場数踏みすぎて、いつもと変わらぬ愛想を振りまくウォームと今後を左右する質問を投げけかけるストームに、一瞬唖然としてしまったグレイだが__。返答によっては、此の場に取り残されると気付いて焦った。  しかし、物事を深く考える前に呼鈴が鳴らされ。数回ノックした後に、聞き覚えのない男から呼び出しを受ける。 「グレイ=アシュレイド、南塔主(なんとうしゅ)様よりお呼び出しがかかっている。同行せよ! 聞こえないのか? 南塔主(なんとうしゅ)様がお呼びである!!」  けど悪い予感がしたグレイは、玄関に近付こうとはしなかった。ただ彼等に逆らっても良い事はないので、事態の転機を伺っていると、途端に呼び出しが止み。凛としたルシウェルの声がドア越しから聞こえてくる。 「」  そこでチェーンロックを付けたまま、グレイの代わりにひょっこり顔を見せたストームが対応する。 「申し訳あらへんな。直ぐ支度するわ」 「グレイ、大事な物を持って移動しようか」  事態を読み切れないが、彼等に付いて行けば安全だと思ったグレイは、黙って頷き返した後。寝室に置いてあった鞄に着替えと貴重品類の他に、1冊の古めかしい本を詰め込むと、待ってる間に話をつけたウォームとストームと共に実家を後にした。
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