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「さて。この後、どうしたもんかな」
「考えてなかったんですか?」
グレイからすると、事態を理解した上での行動に見えたのだが……。機転を利かせたルシウェルの案内で送迎車に乗り込み、レディウスの管理下である北の関所へ向かいながら、ウォームは何故グレイが狙われたのか考え始めた。
「さすがに突然の出来事だったからね」
「心当たりないんか?」
ストームに問われ、一応考えてはみるものの。そもそも南塔主と呼ばれる人物と面識が無いグレイは、首を左右に振って俯いた。
「さすがにLiderの内情は知らへんのか」
「南塔主と言えば、北当主レディウスと馬が合わないとは聞くけどね」
それに困惑の色を浮かべるグレイの様子からして、南塔主との繋がりはないと判断したウォームは、今後を見据えて言葉を続ける。
「とりあえず、まだ何かされた訳じゃないし……。もしグレイを返して欲しいと言われたら、僕等は何も言えそうにないよ」
「そうやな。十中八九フレム絡みなんやろうけど、引き渡しを拒めばフレムの立場が危うくなること間違いなしや」
「悪いようにはしない、とは思うけどね」
「その辺は、グレイの方が詳しいやろ?」
するとグレイは、最悪な事態を想像して身を震わせた。序列が存在する此の世界で、頼れる身内がいないグレイの存在価値は無いに等しく。だからこそ、危険と隣り合わせの裏世界で働くことを余儀無くされたのだ。
ーーまた、逆戻りするのか?ーー
フレムと出会った事で、ささやかな幸せを掴み掛けていたグレイは、一気に絶望の淵を彷徨う事となった。
【完/最強にして最弱でした】
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