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そして、時の間に籠って48日目__。
とは言っても、実際は三時間ぐらいの時間しか経ってないけど……。ようやく手合わせと言えるレベルまで成長した俺は、元の時間軸に戻り。ムグルの提案で、3時のおやつを摘みながら今後の予定を話し合うつもりでリビングに顔を出すと、和菓子を摘まんで感動していたグレイと目が合って呆然とする。
「あれ? 珍しいお客さんが居るね」
「ごめんなさい。私の判断で、一時的に預かる事になったの」
キッチンから真っ赤な長髪を1つに束ねた女性が姿を現して言うと、ムグルは「それは構わないんだけど」と返して、黙ってグレイと目を合わせていた俺を見た。
ーー何かあったに違いない。
それは事情を聞かなくても分かりきった事だったけど、さすがに何があったのかまでは俺も知らないので。ムグルの視線に気付いても、説明のしようがない。
「彼と一緒に顔を出したのは、風の魔石を管理するストームさんよ」
「ウォームの姿は?」
「なかったわね。後で迎えに行くと言って、ストームさんは颯爽と何処かに行ってしまったし……。事情を聞こうにも彼自身困惑しているようだったから、ひとまずお茶を勧めたとこなの」
すると我に返ったグレイは、座ったままムグルにお辞儀した後、緊張した様子で出された湯飲みを見つめるように下を向いた。
ーーあ、これ。
口止めされてるパターンだ。
恐らく何かが起きて、なんでWPに頼らなければならなくなったのか。理由は知ってると思うけど、知られるとマズい出来事なのだろう。申し訳なさそうにしているグレイから尋ねることを躊躇したムグルは、黙って話を聞いていた俺に話を振る。
「フレム君、何か知ってる?」
「とりあえず、俺の命が狙われるようになったから。グレイの身を守るためにも、直接話に行くような事を言ってたけど……」
「それじゃあ何処かの誰かさんが、フレム君の弱味として、グレイ君を利用しようと計画してたところに、ウォームさんとストームさんが鉢合わせた感じかもしれないね」
「じゃあ俺の所為で……」
けど俺が暗い影を落とす直前に、席を立ったグレイは「それは違うよ!」と否定する。
「僕に戦う力があれば、狙われる心配なんて無かった訳だし……。フレムが落ち込む要素なんて無いから、気にしないで!」
「でもっ」
「まぁまぁ。一番悪いのは、グレイ君を狙ってきた人達だろうし、二人そろって気に病む事はないよ。それよりレナ、他の皆は?」
「念のため、見回りに行ってもらったわ。通信には、蓮と緑ちゃんが引き続き仕事してもらってるけど。今のところ音沙汰無しね」
「それは相変わらずって事だね。グレイ君の事だから、Liderに聞くのが一番だとは思うけど」
報告を受けて肩を落としたムグルは、悩まし気に顎に手を添えて考え始めた。恐らく、WPとしてグレイを守ってあげることは出来ないからだろう。
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