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「どうやらフレム君にとってグレイ君は、お目付け役って言うよりパートナーのようね」
足手まといだとはっきり言えない俺の様子を見ていた赤髪の女性が、微笑ましいとばかりに小さく笑って突っ込みを入れた。
でも彼女の名前を知らない俺は、何と返せば良いのか分からず、ムグルにアイコンタクトでSOS。すると合図に気が付いたムグルは、左手を添えて切っ掛けを作る。
「彼女は、ボクのパートナーだよ」
「自己紹介が遅れてごめんなさい。レナ=リスティーンっていうの。よろしくね」
「よろしくお願いします」
でもパートナーの意味を誤って解釈した俺は、レナの右横に立つムグルの年齢を考慮して失礼な発言をしてしまう。
「結婚してたんだね」
「彼女は仕事のパートナーだよ」
「私は全然構わないけど」
思わず意識したのか。ほんのり顔を赤くして言うムグルに対し、ニコニコと嬉しそうに応えるレナ。脈はありそうだけど、まだ付き合ってもいなさそうな反応である。
「仲睦まじいですね」
「ムグルは私の欠点をフォローしてくれる存在なの。私は勢いでどんどん決めちゃうタイプだから」
「そうなんですね」
ついでに言うと、思った事をストレートに口に出してしまうタイプのようで。小賢しい事が苦手そうなストームが気に入るのも分かるような気がする。
「実力としてはどうなんですか?」
ーーと、これはグレイ。
代表会議に出席し、何かと表沙汰な仕事をしているムグルに比べて、日の当たるような仕事をしているように見えないからだろう。
アドバイスを含めて、彼女に尋ねたんだろうけど……。レナは開き直った様子で「雲泥の差よ」と答えた後、ハッキリとした口調で「足手まといにしかならないわ」と言った。
「それでも一緒に居られるのは?」
「ムグルが男の子だからよ。研修生の8割は女の子だから」
ーーなるほど。
つまり立場の違いを補ってもらっている事で、人間関係を保っているようだ。
「身の回りで困ってる事は、守護竜お任せにしてるけど。それでも異性に知られたくない事ってあるでしょ?」
ーー確かに。
俺の場合、性別が真逆になったことで。
同性でも事情を知る鳳炎にしか相談出来ない事から、その有難みは分かる。
「それに二手に別れる事で、出来る事もあるのよ。私の傍にずっとムグルがいると、相談したくても相談出来ないだろうから。状況に合わせて折合いを付けているの」
「勉強になります!」
「そう言えば、こんなにグレイと長く離れたのは久しぶりだね」
「それでセンチメンタルになってたのかしら」
「センチメ?」
「心細い、て言う意味よ」
聞き慣れない言葉をムグルに言われ、グレイのオウム返しにレナが答えると、心当りがある様子で胸に手を当てたグレイは、少しばかり間を空けて「そうですね」と肯定した後、ストンと着席した。
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