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第37話/予定外の遭遇
「へー! 思いの外明るいんだね」
地下をイメージしてたが、吹き抜けの天井を見上げると太陽光を感じられて嬉しくなった。
もっとも明るいだけで、暑さを感じるようなものじゃなかったけど、心なしか肩に乗っている鳳炎も嬉しそうだ。
「昔、巨大な鉱石がありまして。それを掘り出した後に出来たのがこの採掘現場です。アナトやアスタロスが出現しても、此処までやって来る事が無いのが最大のメリットですね。彼方に見える建物は、休憩所を兼ね備えた工場です」
「すげぇ」
ルシウェルの案内を聞きながら校庭より広く、歪ながらも楕円形にくり貫かれたような平地の一角にある建物を遠目で見ては素直に感心する俺は、まるで遊園地に遊びに来た子供のように見えるかもしれない。
俺の護衛として同行するウォームとストームは、ディフロスと一緒に後方から見守るだけで五月蠅い事は言って来ないが、内心溜息ぐらいは吐いているのかもしれない。
おまけに更に増えたLiderの護衛さん方は、俺にとって風景に等しい。でなければ、ゆっくり堪能出来ない程の人数だったりするんだけど……。
俺は、そんなことお構い無しに足下にちらほらと転がっている鉱石を拾っては、グレイに何であるか尋ね。更にルシウェルの話を聞いてから手離すを繰り返し、目的の現場に辿り着くまでが長かった。
「フレムがいると、採掘現場も観光名所だね」
「グレイ達は見慣れたもんなの?」
「まぁ社会見学で、絶対立ち寄る場所でもあるからね。だけど実際採掘現場となる穴に入るのは初めてだよ。結構カラッとしてるんですね」
「湿っぽい洞窟をイメージしてたの?」
「はい」
拠点となる吹き抜けの地下とは違って、真っ暗な横穴は水気が無く。グレイがランプを持って移動するルシウェルの問いに肯定したところで、採掘の拠点地として設けられた広い空間に出た。
「まだこの辺は、地下水から遠いこともあって土が乾燥してるだけなの。作業員は此処からトロッコに乗って任された現場に向かうから、場所によってはもっと湿気があるところで作業してるはずよ」
「じゃあ俺達もトロッコに乗って?」
「そうしたいのは山々なんだけど……。保全のため壊れたままになってるから歩きね」
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