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第59話/伝説に生かされる者
あれから寝室として利用していた部屋に戻ると、荷解きすら録にしなかった荷物をまとめて、ウォームの案内でヘリポートに移動。
まだ慌ただしく輸送機へと荷を積み込む作業をしていたが、その様子を横目にストームとサンダーが話し込んでいた。
「お待たせ」
「なんや早かったやないか」
「もう話がついたのか?」
「フレムのお陰でね」
気が知れた仲だからこそ、ウォームは会話の中に割って入ると、小型ドラゴンへと姿を変えた鳳炎を肩に乗せ。荷物を片手に大人しく待機する俺を評価してくれた。
でも俺は助言したぐらいで、何の成果も出してない気がするのですが……。
「やはり待遇の差か」
--いや、それはないと思うけどな。
今サンダーに意見すると、カインドの事もあって、仲違いしそうだから言わないけど……。当たり前だった事が当たり前でなくなった挙げ句に、世代交代しての価値観が変わっても教皇様が言う事は絶対。
説明を求められても、教皇様しか説明出来ない事が多くて。Liderと民間の間に溝が発生し、その穴埋めに異界の人間が運営・管理する施設を利用しようとするから、ややこしい事になってるだと思うのですが……。
「あっ。ねぇ、ウォーム」
(言っとくけど、あの話し合い。もし鉱石の運用を施設に持ちかける人が出てきたら、アウトだからね)
周囲に聞かれてはマズい話題だと判断した俺は、ウォームの注意を惹いたところでテレパシーで忠告。すると上手い具合に、ウォームにしかテレパシーが届かなかったようで。テレパシーで(え?)っと驚いた反応を見せたウォームに、ストームが「どなんしたんや?」と声に出して質問。
そこで「あー、ちょっと待ってね」と一旦ストームを制止したウォームは、テレパシーで俺に質問する。
(どうしてアウトなのか、説明してくれくないかな? フレム)
(説明も何も、教皇様は多分。俺達が調査し易い環境を整えようとしているんだと思う。それなのに俺達が手を貸しちゃったら、移住する理由がなくなって。何をするにも住民の目を気にしなきゃならなくなると思うよ?)
そこでようやく事の次第を理解したウォームは、口角を上げて「なるほど」と呟いた後に、テレパシーでサンダーとストームに説明を始めたのだろう。暫く黙って様子を窺ってると、サンダーが声に出して呟く。
「タイミング的に、その読みは濃厚だろう」
「仮に話を持ちかけられても、死石を理由に断ればえぇやろ。鉱石の取り扱いは、Liderの協力があってのことやしな」
「それじゃあ早いとこ、スフォームとウェイクに話を通しておく必要があるね。サンダーはアスタルトの調査で忙しくなるだろうから、僕かストームが連絡を試みてみるよ」
そこで「俺は?」と誰となく尋ねてみれば、ストームが俺の頭に右手を添えて言う。
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