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玄関のチャイムが鳴ったので。
出るとお隣さんだった。・・・じゃなくて。付き合いだして3日目の「彼女」だった。
「実家に帰ったら、親せきからカステラが届いてて。お裾分け」
と小さめの紙袋を持ち上げる。「お好きですか?」
甘いものはそこまで。だけど直ぐに「好きです」と返事する。
「よ、良かったら一緒に食べない?」と誘う。俺、自分を褒めてやりたい。
彼女は「じゃ、お邪魔します。・・・キッチン使っていい? お皿に出すね」
俺の部屋のキッチンに。彼女が立ってる。
うわぁぁぁって叫びたいのをこらえる。でも、ニヤニヤしちゃうのは止まらない。
たわいもない事を話したりして。カステラはとっても美味かった。
と。彼女の視線が机の上の額に行き。
しまった!
それは母の作った請求書で。全くよくできた請求書で。
・・・母としては愛情のつもりらしいんだけど。
こんな借金抱えてるって思われたら。・・・最悪振られてしまう。
だけど、彼女は。なぁにこれ?
と笑ってくれた。
それから。俺が20歳になった時に、母が作ったもので。
俺が大きくなるまでにかかった金額だということで。
これだけのお金がかかっていることを忘れるな、的な。
父のフォローによると愛情表現のつもりらしいとか。
「とにかく変わった母なんだ」と困ったように言うと。
彼女はもっと笑って。
「面白い! 子どもが出来たら、私もやりたい」
と言ってくれた。
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